『ヒメアノ~ル』監督が見た古谷実ワールドの面白さとは?肝はきわどいギャグにあり
古谷実の漫画をV6の森田剛主演で実写映画化した『ヒメアノ~ル』の吉田恵輔監督が、古谷作品から受けた影響を語った。吉田監督にとって漫画の実写化は『銀の匙 Silver Spoon』(2013)に続いて2本目。古谷作品については、これまでにも「シガテラ」などの映画化を妄想したことはあったというが、いざ監督を引き受けるにあたっては「稲中」(『行け!稲中卓球部』)世代ゆえにハードルの高さも感じたそう。しかしどうしてもチャレンジしてみたいという憧れが勝った。
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全6巻の漫画を99分で描いた映画版では、作品の中盤に出てくるタイトルカットを挟み、前後でガラリと作品のトーンが異なる。「昨日までハッピーに生きていた人が急にトラブルに巻き込まれたりすることは普通にあると思うし、それが古谷さんの世界観でもあるから、映画が進むにつれて岡田(濱田岳)や安藤(ムロツヨシ)のポップなトーンが森田(森田剛)トーンに侵食されていくような作りにしたくて。前半と後半で色味も変えて、岡田と安藤のギャグパートはカメラもFIXで撮っているんだけど、森田が出てくると段々画面が揺れ始めるようにしたんです」というのがその狙いだ。
自身が読者として感じていた古谷漫画の面白さについては「古谷さんは、他の人が描いたらアウトだよねというような、下ネタのギリギリのところを突いてくるじゃないですか。そういうセンスが好きで」と語る。「ギャグなんだけど一歩間違えるとただのアブない人になるきわどさ……僕が『机のなかみ』(2006)でお父さんと一緒にお風呂に入る女子高生を撮ったりしたのも、古谷さんの漫画の世界だったらOKじゃないかというところがあるし、どうやればギャグとして成立するかどうかの微妙なさじ加減を学んでいるような感じです」と古谷作品へのリスペクトを捧げた。
その古谷作品の中でも本作は特に流血度の高い一作だが吉田監督はもともと塚本晋也監督の組の出身。塚本イズムを発揮しやすいテーマでもあったのでは? 「僕の映画界でのキャリアはセックス&バイオレンスの世界から始まっているので、今回は割と原点回帰みたいなところはありますね。塚本監督は僕にとって、いつまでたってもお父さんというか師匠のような存在だから、会うと萎縮してしまうし、自分が監督になってからは余計に萎縮してます(笑)」と話す顔は映画少年に戻ったかのよう。
「森田のアプローチの仕方を含め、原作とは違う部分や映画で描いていないエピソードもあるので、映画が原作を読む楽しみのきっかけにもなるんじゃないかと思う」と吉田監督。映画版では、精鋭キャストのイメージでさらに広がった『ヒメアノ~ル』の世界を堪能できるはずだ。(取材・文:那須千里)
映画『ヒメアノ~ル』は5月28日より全国公開