「HEROES」出演の日本人俳優、直談判で切り開くハリウッドでのキャリアを語る
映画『硫黄島からの手紙』をはじめ、テレビドラマ「HEROES/ヒーローズ」や映画『アベンジャーズ』のテレビドラマ版こと「エージェント・オブ・シールド」に出演するなど、ハリウッドで活躍する俳優・尾崎英二郎が、メキシコを代表する映画賞・ルミナス賞で作品賞を含む3冠に輝いた映画『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』(アメリカ・メキシコ合作)で役を勝ち取るまでの苦労を、1日(現地時間)にロサンゼルスのスタジオシティーで行われたインタビューで語った。
第二次世界大戦下、アメリカ西海岸の小さな町を舞台に父と息子の絆を描いた本作は、ルミナス賞で作品賞、監督賞、期待される俳優賞(ジェイコブ・サルヴァッティ)を受賞。尾崎は、主人公の白人少年ペッパーに勇気を与える日本人マサオ・クメを演じている。
ハリウッドでは、スターにならないかぎりオーディションを受けて役をもらうのが普通で、その過程は波瀾万丈。尾崎も、同作のオーディションを受け予選を通過したものの、2度目のオーディションを受けに行ったその日に、同役の設定が10代の青年に変更されたと知らされたという。キャラクターのセリフや動きを予習してオーディションに備えていた尾崎だったが、その日は代わりに行われた日本兵役のオーディションを受けることに。『硫黄島からの手紙』で日本兵役を務めていた尾崎は、真に迫る演技で監督をはじめとする関係者をうならせた。
ただそれに甘んじて終わったわけではない。「監督が自分に興味を持ってくれているのがわかったので、本来オーディションを受けることになっていたマサオ・クメという役に僕がどれほど共感を抱いていたかを彼に語って、ぜひ自分の勉強してきたそのキャラクターの演技を見て欲しいと頼んだんです」と尾崎は明かす。土壇場での尾崎の熱意と演技に心を動かされた監督は、その場で脚本家にキャラクターの年齢設定を元に戻すようにオーダー。尾崎は「その場の口だけっていうのはハリウッドではよくある話」と期待しなかったそうだが、1週間後にマサオ・クメ役が尾崎に決定したという朗報が届く。
本作を手掛けたアレハンドロ・モンテベルデ監督は親日家で、日本に数か月住んでいたこともあるという。尾崎は「メキシコ人監督作だからこそ、第三者の目線で第二次世界大戦を語っていて、日本でも大きな共感が得られると思う」と分析する。また、「自分の努力が作品の映画賞受賞という形になったことは本当に嬉しい」と語っていたのが印象的だった。これからも尾崎の活躍に注目したい。(取材・文:明美・トスト/Akemi Tosto)
映画『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』は8月27日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開