もしヒトラーが画家として成功していたら?
米アニメ界の鬼才ビル・プリンプトンが、モキュメンタリー映画『ヒトラーズ・フォーリー(原題) / Hitler's Folly』を手掛けた。その内容は、もしナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーが画家としてのキャリアを成功させていたら、果たして今の世界はどうなっていたのか? というものだ。
【写真】ビル・プリンプトンがアニメーションを担当『FUCK』
事実、ヒトラーは、政治家を志す前は画家を目指していたことは知られており、ウィーン美術アカデミーの入学試験に落ちた過去もあった。さらに彼はディズニーのアニメ作品に興味を示していた。本作は、もしも彼が美術アカデミーの試験に合格していたら、もしも彼がディズニーのアニメーターだったらと仮定しながら、彼が創造したアートの世界観を、ユーモアを持ってドキュメンタリー化したもの。
製作経緯について「僕がヒトラーに関する書物を読んだ際に、彼がアニメ『白雪姫』が好きだったことを知った。その時、彼が7人の小人たちを鑑賞して笑顔になっている姿は、僕には最も非現実的なことに思えた。だが事実、彼は政治家になる前に画家で、美術アカデミーの入学試験も受けていた。もし彼が合格していたら、第2次世界大戦は変わっていたかもしれないし、アニメが好きだった彼は、おそらくディズニーのアニメーターになっていたかもしれない。そんな、彼がなりえなかった人物を想像することに、少々狂ったように感じられるユーモアがあると思った」と明かした。
モキュメンタリーを描く上で気をつけた点は「もちろん、ナチスの強制収容所に関しては、まだ生存者もいるため、描けなかった。今作は、ヒトラーのアートへの興味や探究心を描いている。彼には映画製作への興味や、戦車内で映像を見せるアイデアなどがあった。そのアイデアの中でも僕が最も気に入ったのは、潜水艦内の映画の試写でポップコーンやコーラなどを持ち込んで鑑賞するものだった。さらに、実際に新種の動物を作ろうとしていたこともあった」とヒトラーの神話的な要素にも触れているようだ。
今作は三つの構成で描かれている。「まず、アメリカ政府や実際にナチスによって撮影されたヒトラーのドキュメンタリー映像。次にヒトラーのアート作品を所有する現在の人たちを(俳優を起用して)描いたもの。三つ目は、ヒトラーが子供の時に描いた絵画やアニメ、実際にヒトラーが鑑賞していたディズニーアニメなどで構成し、それらにヒトラーに関する自己解釈したユーモアを含めたものだ」と答えた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)