原作と違う結末、観客どう思う?『64』監督が心情語る
佐藤浩市主演で横山秀夫の傑作警察小説を映画化した2部作の後編となる『64-ロクヨン-後編』がいよいよ公開、同作のメガホンをとった瀬々敬久監督が心の中の思いを語った。
5月7日に公開された『前編』が、公開4週目で動員100万人を突破したことについて瀬々監督は、「決して派手とは言えない大人向けの作品がヒットしてくれると、今後はいろいろな企画の可能性も広がってくる。知り合いの映画関係者が自分のことのように喜んでくれています」と明かす。後編は「原作とは異なるラストで2部作感動巨編ついに完結!」というコピーとなっており、「ファンの方にどう受け入れられるか。怖いですね」と笑ってみせるも、その表情からはやり遂げた充実感のようなものがうかがい知れた。
昭和64年に発生した未解決の少女誘拐殺人事件、通称「ロクヨン」に挑む警務部の広報官・三上にふんする佐藤浩市は、本作の脚本制作段階から参加。ところどころで「身を削る思いで作った」と語っている。瀬々監督も「彼が参加したことで、脚本に厚みが出た。組織の中で個人がどう生きるのか。どう踏み出していくのか。脚本を作る段階で、自分自身の役作りもしっかりと進めていったんだと思います」と振り返る。
さらに「浩市さんは役者だけでなく、トータルで映画を考える人なんですよ」と瀬々監督。「非常に細やかな方で、カメラの位置とかサイズ感なども常に気にして芝居をしている。つまり映画を熟知している俳優なんです。だから、脚本作りに参加するということも、彼にとってはことさら大げさなことではないんだと思います。もちろんこの作品に関しては相当な意気込みで入ったことは間違いないですが」と続けた。
ならば“佐藤浩市監督”誕生という可能性も将来あるのだろうか? という質問には「おそらく浩市さんはやらないと思います」と答える瀬々監督は、「監督をやりたがるタイプの俳優ってなんとなく分かるんですよ。でもおそらく浩市さんはそういうタイプじゃないと思いますね」と笑ってみせた。
「もともと自主制作から始めて、ピンク映画をやってきた人間なので、映画の面白さはどこであっても変わらない、という気持ちがある」と語る瀬々監督は、本作のようなメジャー作品のみならず、第61回ベルリン国際映画祭で受賞した『ヘヴンズ ストーリー』といったインディーズ作品も手がけるなど、両方のボーダーを軽やかに飛び越す活躍を見せている。そんな瀬々監督が現在、制作を進めている最新作は、女相撲の力士と若きアナキストたちを描き出すインディーズ作品『菊とギロチン』。「まだお金は集まっていないんですが、秋には撮影したいと思っています。ただお金がまだ集まっていないので、どなたか出資をお願いします」と笑いながら呼びかけていた。(取材・文:壬生智裕)
『64-ロクヨン-後編』は6月11日より全国公開