門脇&菅田、恋人たちが破局に向かう原因を考える
直木賞作家・小池真理子の同名小説を映画化した『二重生活』で、主人公の大学院生を演じた門脇麦と、その同棲相手の恋人を演じた菅田将暉が、現実にもありえる劇中の恋人同士のすれ違いについて語り合った。
大学院で哲学を学ぶ平凡な女性が、修士論文の題材に「理由なき尾行」を選んだことで、他人を覗き見する禁断の行為に取りつかれていく本作。門脇が主人公の珠を演じ、その同棲相手の恋人・卓也を菅田が演じている。担当教授(リリー・フランキー)の勧めで哲学的尾行を始めた珠は、一見幸せそうな家庭人の隣人・石坂(長谷川博己)を尾行して、その秘密を知るうちにのめり込んでいき、一番近くにいたはずの恋人の存在が見えなくなっていく。
ドキュメンタリー出身の岸善幸監督は、リハーサルや細かな説明をせず、自らが書いた脚本の解釈や芝居は演者に任せていたという。そこで門脇は珠という女性を「自分が傷つかないように生きてきたんだろうなあと。そんなふうに本心で生きていないと、自分のリアルな感情が麻痺してしまって、本能から湧いてくる感情が機能しなくなってくる。そういうもやの中で生きているのでは」と解釈し、一緒に暮らす卓也との関係の変化についても「失ってみたり、何か起きてから初めて大事だったことに気付いた」のだろうと思いを巡らせる。
卓也を演じている間、「ずっと寂しかったイメージがある」と語る菅田は、「何をしていようとどこかでつながっているパートナーだと思っていたけど、違ったのかなと感じるようになる。結局コミュニケーション不足なんでしょうが、お互いにマンネリを感じていて、恋愛重視で生きてきていない気もする。僕らの世代は、社会人になって数年目なので、恋人のこと以外にも小さなパニックがたくさんある生活がベースなのかなと思っていました」と、恋人を理解できなくなる過程を推察する。
監督やスタッフの間でも、「卓也がかわいそう」という声があがっていたそうだが、門脇も「珠の身勝手な行動で、卓也を傷つけて寂しい思いをさせてしまうから、わたし自身も珠のことを『最低』『好きになれない』って思ってました(笑)」と本音をもらす。しかし、恋人同士の関係について菅田は「すれ違いって、自分が違うと思った瞬間に言えればいいけど、言えなかったりするじゃないですか。そういうものが積み重なってくると、特に男は勝手に解釈や想像を始めて結論みたいなものを出してしまい、相手のせいにして押し付けるところがあるのかも」と、一方の問題だけではないことをおもんばかる。
とはいえ、頭で考えた芝居は通用しなかったため、自らの芝居をどう演じたかなどを論理的に解説できるシーンは一つもないそうで、真の解釈は観客に委ねられている。尾行するヒロインを観客自身が尾行するような錯覚に陥ったり、他人の生活や秘めた思いを覗き見る背徳感に満ちた本作は、心の中を探る心理ミステリーや愛のサスペンスともなっている。(取材・文:天本伸一郎)
映画『二重生活』は、6月25日より新宿ピカデリーほか全国公開