ディズニー映画で成長した自閉症の青年を描いたオスカー候補のドキュメンタリーとは?
今年のサンダンス映画祭ドキュメンタリー部門で監督賞を受賞した注目作『ライフ、アニメイテッド(原題) / Life, Animated』について、ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督、作曲家アラン・メンケン、オーウェン・サスカインド、さらにオーウェンの父親ロン、母親コーネリア、兄ウォルターが、6月21日(現地時間)ニューヨークのクロスビーホテルで行われたイベントで語った。
本作は、3歳で言葉を失った自閉症の子供オーウェンが、ディズニー映画のセリフを丸暗記することで、家族とのコミュニケーションを図っていく過程が描かれた作品。
今は青年となったオーウェンの一人暮らしについて、母親コーネリアは「もちろん、彼が施設で一人暮らしを始めたのは、とても大きな出来事だったけれど、彼を最初にキャンプ場に宿泊させた時も大変だった。キャンプ場からワシントンD.C.の自宅までの9時間の帰路でわたしは泣いたわ。でもその時、自閉症の子供を抱える多くの親から素晴らしいアドバイスをもらい、オーウェンが通う学校側からも『単に宿泊するだけのキャンプではなく、オーウェンにとって作業が難しいキャンプに、あなた方(両親)が信頼できる人と共に参加させるべきだ』と言われたわ」と、オーウェンを甘やかさなかったようだ。一方、父親ロンは「大学に通う前、オーウェン自身にさまざまな感情が交錯し、『リトル・マーメイド/人魚姫』のシーンを僕らに見せながらその心情を伝えてくれた」と振り返った。
恋人についてオーウェンは「僕はこれまで(今作の相手も含め)2度失恋をし、なんとか乗り越えてきた。まだ次の女性を探すのに十分な時間があるから心配はない。でも、ニューヨークやボストンの女性がいい。わざわざ毎日会わなくていいからね(笑)」と答えた。オーウェンの兄の名はウォルター。「ディズニーの創始者と同じ名なのは偶然だけれど、弟との関係上深い意味合いがある気がする」と語る兄は、弟の面倒を見てきた。
今作の音楽を手掛けたアランは「オーウェンの映画内の言葉や歌は、僕が彼の人生を理解し、作曲する上で、地図のナビゲーションのようなものだった。彼はディズニー映画の中で生きながら、この世界と対面している。そんな彼のために作曲できたのは、オスカーを取るより素晴らしいことだ」と感謝した。最後にウィリアムズ監督は「今作は童心に帰れるだけでなく、家族愛も描かれている」と締めた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)