俳優・田中直樹に影響を与えたのは『ピンクパンサー』
3人の囚人が生き残りをかけて舌戦を繰り広げる密室劇のコメディー映画『だCOLOR? ~THE脱獄サバイバル』に主演した人気お笑いコンビ、ココリコの田中直樹が、共演した佐藤二朗、渡辺いっけいの芸達者ぶりと、俳優業への熱い思いを明かした。
本作は、架空のN国で囚人数増加に伴う経費削減のため、終身刑となった囚人をゲームで勝った者のみ釈放し、残りを処刑するという新法が施行されたことから巻き起こる極限状態での滑稽な心理戦を描いたシチュエーションコメディー。田中は気弱で嘘をつかなそうな男、佐藤はお調子者だが人間不信な男、渡辺はプライドの高いコワモテ風な男をそれぞれ演じ、生き残ろうと必死過ぎるあまり、騙し騙されの丁々発止のやりとりを繰り広げることになる。
作品の大半が、丸イスしかない密室で手錠をかけられた3人の会話劇のみで展開する本作は、田中いわく「自分が助かりたいがために嘘をついて足を引っ張り合うような、そういう醜さみたいなものが転じて笑いになればというのが大前提で、狙った笑いにならないよう心がけました」という心理劇的要素もあるが、芸達者な3人の掛け合いこそが見どころで、「面白さが違うお二人に囲まれて心強かったです。キャラクターになりきったお二人が、本番ではリハーサルと芝居を変えてくることもあるので、笑ってNGになることもありました」と振り返る。
渡辺には「待ち時間でも手錠を外さず、腕をどれぐらい動かせるかなどを確認し、本番でそれを生かした動きをすることで、変化が少ない密室の会話劇にも動きが出ていた」と感心し、佐藤には「福田雄一さんの脚本をよくわかっているから、セリフをどんどん足してくる」と驚かされたそうだが、その芝居について「いっけいさんは動きが変わっていく体のアドリブ力、二朗さんはセリフが変わっていく言葉のアドリブ力というすごさを感じました。あくまで役に沿っているから自然だし、狙っていないからこそ笑える。長回しで撮っていたので、舞台やコントをやっているような感覚もありました」と絶賛する。
自身のアドリブに関しては、役柄上あまりできなかったそうだが、三谷幸喜の『みんなのいえ』(2001)の初主演以来、コンスタントに続けている俳優業については「役を演じることに魅力を感じるので、本当に好きなだけなんです。それはコントでも、笑いがないドラマや映画でも」と謙虚だが、子供のころに観た『ピンクパンサー』シリーズが好きでピーター・セラーズの作品やコメディー映画にはまり、また、映画『やぶれかぶれ一発勝負!!』(1985)を観たことなどが芸人を志すきっかけの一つにもなったそうで、「映画やドラマ、もっと言えばコントにも、それを観ることで一日の気分だったり、時には人生観まで変えてしまう力がある。そう信じているから、どんな作品でも参加してみたいし、面白いと言ってくれる人が一人でもいたらいいなと。だから演じることへの間口はすごく広げているつもりです」と、熱い思いを明かした。(取材・文:天本伸一郎)
映画『だCOLOR? ~THE脱獄サバイバル』は、7月9日より全国順次公開