“監督”ナタリー・ポートマン、巨匠の特殊な撮影に影響受ける
子役出身でオスカー女優となったナタリー・ポートマンが、監督デビューした新作『ア・テイル・オブ・ラブ・アンド・ダークネス(原題) / A Tale of Love and Darkness』について、8月18日(現地時間)ニューヨークのAOL開催のイベントで語った。
本作は、イスラエルの作家アモス・オズの自叙伝を映画化した作品。イスラエル建国前の1940年代を舞台に、英国委任統治領パレスチナに移住したアモスの両親が、ユダヤ人とアラブ人の対立が深まり衝突が起きるエルサレムで、アモスに文学を学ぶことの影響力を教えていく。
オズの自叙伝で監督デビューしたことについて「初めてヘブライ語から英訳された作品を読んだ時点で、すでに映画化できると思った。母親と息子の関係に感動したうえに、イスラエル建国初期の設定だったから。(イスラエル出身の)わたしは、あの当時欧州からイスラエルという新天地に、建国を夢見て避難民が砂漠を越えてきたクレイジーで奇妙な話を家族や親戚から聞かされていたの。それに、そんな彼らと昔からの居住者との衝突は、現在も抱えている問題だと思ったから」と理由を明かした。
オズ作品の脚色について「20年近く脚本を読み、いつの間にか(執筆方法は)身に付いてきたけれど、脚色に関して初心者だったため、直感で進めていった。ただアモスに、『本は、本として存在しているため、本をそのまま映画化するな! 自分の作品を作れ! そして僕の母親がなぜそうなったか(自殺したか)を聞かないでくれ』と言われたの。それは、これまでも多くの脚本家が(わたしの前に)彼の作品を脚色していて、母親がなぜ自殺したのかを説明しようとしたことがいけなかったの。なぜなら、アモス自身にとっても謎だったから」と答えた。
今作を監督する上で、映画『聖杯たちの騎士』でテレンス・マリック監督とタッグを組んだ影響は大きかったそうだ。「彼のやることは、他の監督とは全く異なるの。通常のセットはかなり規律に沿っていて、それらが必要だと皆が思っているけれど、テレンスのような監督と仕事をすると、そうではないことがわかる。通常の撮影ではメイク直しやヘアセットをシーンの前にするけれど、テレンスの場合は、『メイクアップなどの時間はない。朝にメイクアップをやったら、その日が終わるまでそのままだ』と言われるの」。マリック監督とのタッグを経て、今作で自由に監督を務めることができたそうだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)