4K『七人の侍』に仲代達矢と野上照代が涙「名作は時空を超える」
黒澤明監督の代表作『七人の侍』のフル4Kデジタルリマスター版が、10月8日より全国55の劇場で「午前十時の映画祭7」として上映されることを記念したトークショーが13日、TOHOシネマズ日本橋で行われ、俳優の仲代達矢と黒澤組の名スクリプター・野上照代が出席した。多くの黒澤作品の現場で活躍してきた野上は、美しい映像と音声で蘇った作品に「涙が出ました。黒澤さんや三船(敏郎)ちゃんにみせてあげたい」と感慨深い表情を浮かべていた。
本作のデジタルリマスターを担当した東京現像所が手に入れたのはマスターポジとデュープネガの2本。そこから全編29万7,407コマを4Kスキャンしキズの修復作業やゴミを取り除く作業、さらにコマズレ補正、そして音声にもデジタルリマスター作業を施し復刻。美しい映像ばかりではなく、俳優たちのセリフもクリアになった。
野上は「当時、三船ちゃんは発音が悪くてセリフが聞き取りづらいと言われていたので、この映像をみせてあげたいですよ」と笑顔で語ると「『七人の侍』は黒澤さんが44歳の時の作品ですが、あのときのエネルギーは本当にすごかった。本人も『2度目はできないな』って言っていたぐらい。製作費も2億2,000万円ぐらいかかったのですが、当時の映画って1本、2,000万円ぐらいですからね。あまりにお金がかかりすぎて途中でやめようって話に何度もなったんです」と懐かしそうに当時を振り返った。
仲代も「すさまじい映画ですよね。大巨人・黒澤明。名作は時空を超えます。涙を流しながら観ました」とデジタルリマスター版『七人の侍』を堪能した模様。本作には仲代も浪人役として登場しているが「最初『歩け』と黒澤監督に言われたんです。生まれて初めての映画で、ピョンピョン歩いていたんでしょうね。『何だその歩き方は!』って散々言われて、たったワンカットなのに6時間ぐらいかかったんです」としっかりと指導された思い出を披露。
その後も、黒澤監督の作品へのこだわりや、三船さんの魅力などを語りつくした野上と仲代。「傑作はどこの国でも落ちることはないんです」と野上が熱いメッセージを伝えると、仲代も「映画はぜひ大スクリーンで観て欲しい。そのためにも我々作り手は魅力的な作品を作っていかないといけませんね」と物作りへの情熱を訴えていた。(磯部正和)