女性キャスターが生放送中に自殺…何が彼女をそうさせたのか
第41回トロント国際映画祭
現地時間14日、生放送のニュース番組中に自殺したキャスター、クリスティーン・チュバックが凶行に及ぶまでを追った映画『クリスティーン(原題) / Christine』が第41回トロント国際映画祭で上映され、主演のレベッカ・ホール(『ザ・タウン』)、アントニオ・カンポス監督(『マーサ、あるいはマーシー・メイ』のプロデューサー)らがQ&Aに登壇した。
事件が起きたのは1974年7月15日のこと。フロリダのニュースキャスターだったクリスティーンは番組の生放送中、自ら自殺すると読み上げてから頭部を撃ち抜いた。劇中では、30歳の誕生日を前に仕事でも私生活でも成功することを夢見るものの、プライベートはほとんど母親と暮らす家と職場の行き来のみで、深刻な婦人科疾患も発覚、情熱を傾ける仕事でもやりたいことができずに局内の人たちとギクシャクし、どんどん暗闇から抜け出せなくなっていくクリスティーンの姿が映し出される。
そんな難役に挑んだレベッカだが、初めに話を聞いたときは二つの相反する感情が湧き起こったという。「最初にエージェントから送られてきた物語の概要を読んだときには、とても辛辣な反応をしたの。この映画を作るのにどんな意味があるのか、って感じた。読んだものはクリスティーン・チュバックについてググった人たちとたぶん同じもので、5行くらいでショッキングなことだけ書いてあり、彼女の人間性を奪っていたから。でも突然、彼女に人間性を与えなくてはいけないとも思ったの」。
そして実際の脚本を読んでみると「想像を超えた内容だった」といい、「とてもクリアに描かれていて深く共鳴でき、当時のアメリカのセンセーショナリズムについての映画でもあり、“成功した女性”の標準に合わない女性であることがどういうことかについての映画でもあり、環境に順応できなことの苦しみについて、そして現在でも人々が話すことをためらうような複雑な精神的な問題についての映画でもあった」とレベッカ。レベッカが外見から内面まで徹底してクリスティーンに成り切っているだけに、彼女の苦しみもダイレクトに伝わってくる。(編集部・市川遥)
第41回トロント国際映画祭は現地時間18日まで開催