故フィリップ・シーモア・ホフマンさんに感謝『脳内ニューヨーク』監督
映画『エターナル・サンシャイン』の脚本家チャーリー・カウフマンが、9月25日(現地時間)ニューヨークの映像博物館で開催された故フィリップ・シーモア・ホフマンさんのトリビュートイベントで上映された監督作『脳内ニューヨーク』について語った。
人気劇作家ケイデン(フィリップ)は、突然、妻と娘に家を出て行かれ、行き詰まった日々を送っていた。そんなときマッカーサー・フェロー賞受賞の知らせが入り、賞金を受け取った彼は、自分の頭の中にあるニューヨークを実際のニューヨークに作り出す壮大なプロジェクトを企画する。チャーリー・カウフマンの初監督作。
フィリップさんとのタッグについて「実は今作の撮影まで、正直彼のことをよく知らなかった。もちろん、彼は自分の役の行動(脳内のニューヨークを作り出すコンセプト)を把握せずに参加することはあり得ないため、それぞれの場面で、ケイデンが何を考えているのか、事前に僕と話し合った。彼は今作では全てのシーンに出演し、そのほとんどでメイクアップをしていた。特に老人となったケイデンは4時間も掛けてメイクアップを施した。夏に撮影した3階建てのブルックリンの兵器工場のセットはとても暑くて、特殊メイクが剥がれたりしたし、彼は髪の毛が後退したかつらもかぶっていたが、全く文句も言わずに真剣に演じてくれた」と感謝した。
今作を監督するまでの経緯について「当初、ソニー・ピクチャーズが企画して(タッグ経験のある)スパイク・ジョーンズが監督する予定だった。だが、僕は日頃から脚本執筆に時間を掛けていて、脚本が完成した時点では、彼はすでに『かいじゅうたちのいるところ』に携わっていて、今作より先に撮影したいと言ってきた。僕はスパイクがいつもどれくらい時間を掛けて制作するかわかっていた。多分3、4年は今作を制作できないだろうし、自分も待てず、スパイクに許可を得て僕がメガホンを取った」と答えた。
パズルのピースをつなげたような構成について「これは観客が見た夢のようなもので、(今作の)僕自身の夢の説明はあまりしたくない。ただ、僕は多くの文学で内的独白を読み、さらに人の脳内にも興味があって、その内面をナレーションなしにどうやろうかと、いろいろ考えてきた。つまり役柄の感情を外の世界に暗喩的にいかに伝えるかが鍵なんだ。それが、最終的に夢の中で人はどうなるのか? という構成になった」と語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)