モテる草刈正雄に頭きた!木村大作、超大作『復活の日』の裏側語る
第29回東京国際映画祭
数々の名作を手掛けた映画カメラマンの木村大作が28日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた、第29回東京国際映画祭「日本映画クラシックス」部門作『復活の日』(4Kデジタル修復版)の上映会に出席し、同作の裏側を赤裸々に語った。
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった角川映画が、南極ロケをはじめ破格のスケールで製作した同作。今回、角川映画40年を記念して、木村監修のもと、1980年の公開から36年ぶりに4K修復で“復活”した。上映後、登壇するなり木村は、「まぶしくて人の顔が見えない! 人の顔が見えなきゃ俺はしゃべれないよ。スポット(ライトの光量)を落としてくれ!」と相変わらずの木村節。この日は時に立ち上がり、身ぶり手ぶりを交えて、映画の裏側を熱心に語った。
角川映画が製作費24億5,000万円を投じ、小松左京の同名SFを映像化した本作。「今の日本映画ではお金がかかりすぎてできないよね。主役の草刈正雄は今、(『真田丸』で)息を吹き返していい顔をしている。悔しかったのは、スタッフの女の子たちにえらいモテてさ。頭にきたよ。俺には誰も寄ってこなかったのに」とぶちまけ会場は大笑い。
撮影時はちょうど、高倉健さんらが出演した『八甲田山』(1977)を撮った後。「生意気盛りの39歳だった」という木村は、「人の言うことは聞かないけど、今よりも10倍くらい元気だった。だから体力のあるヤツを求めたんじゃないの。俺も南極で撮影をやってみたかったから受けた」と振り返る。
「輸送船に3億円、ロケハンだけで世界各国を回り90日で5,000万円はかけた」など角川映画ならではのスケールで行われた撮影だったが、「(プロデューサーの)角川春樹さんがロケハン先のロンドンにやってきて、『野性の証明』や『人間の証明』は制作費が10億円くらいだったので、半分にならないかと言ってきた」という。当初はメガホンを取った深作欣二監督も南極のシーンを北海道ロケで代用できないかなど模索をしたというが、木村は「南極に行かないなら俺はやらないと言った。北海道でも(ロケハンで使った)ハイエースから絶対に降りなかったよ」と述懐。物言うキャメラマンの面目躍如たる熱弁ぶりで会場を沸かせた。
その他にも、同作に出演したハリウッドスター、グレン・フォードが酒浸りだったため怒鳴りつけた話や、南極ロケで座礁事故を起こしニューヨークタイムズの一面を飾った話など、破天荒なエピソードが続々と飛び出し、予定時刻を大幅にオーバーしたものの観客は大喜び。最後は「来年はまた映画をやりたいと思っている。ただし、来年の春ごろになっても情報が出てこなかったら、その企画はつぶれたと思ってください。次の映画? 山の映画じゃないよ。最近、山の映画がコケたばかりだからね」と最後まであけすけに語り尽くして会場を後にした。(壬生智弘)