RAD野田洋次郎『君の名は。』音楽の裏側…瀧と三葉の恋の“追体験”だった
第29回東京国際映画祭
空前の大ヒットを記録している映画『君の名は。』の新海誠監督と、同作の音楽を担当するRADWIMPSの野田洋次郎が27日、都内で行われた第29回東京国際映画祭「Japan Now」部門上映に来場、本作のヒットの一因とも言われている印象的な音楽の制作秘話を語った。
全国映画動員ランキングにおいて9週連続で1位を獲得し、大ヒット中の『君の名は。』。本作が大きな反響を受けている理由について野田は、「確かにいろんな説明付けができるけど、きっと新海監督がセオリーを無視して、今までになかった流れを堂々とやったことがすごいことだし、大きなファクターじゃないかなと思います」と分析する。
本作の音楽制作を務めたRADWIMPSは、「前前前世」ほか主題歌となる4つのボーカル曲と22曲の劇伴を手掛けた。野田とのコラボについて新海監督は、「洋次郎さんと映画ができることになり、音楽だけでなくて、キャラクターの言葉、モノローグの部分は洋次郎さんに任せればいいと思っていた」と述懐。音楽面のみならず、歌詞の部分でも野田に期待をしていたというが、野田も「確かにタイトルになるような言葉はありませんかと、途中で言われた記憶があります」と明かした。
新海監督から「音楽にも過剰な要求があったと思いますがどうですか?」と改めて尋ねられると、野田は「はい!」と即答し、会場は大笑い。「監督のすごいところはあきらめないところ。それは映画監督や、アニメ監督には必要な才能だと思う。あのあきらめのなさは普通の人間ではないくらい。その姿勢がすごい」と続けた。それを受けた新海監督は「皆さんご存じだと思いますが、あきらめないのは洋次郎さんも一緒」と発言。似たもの同士の二人だったようだ。
「気持ち的にはインストゥルメンタル(歌なし)の方が楽しかったです」と語る野田に、「そうだったんですか?」と驚いた様子を見せた新海監督。野田は、「やはり言葉が映画を邪魔するんじゃないかと思っていたのですが、監督からはもっと言葉が欲しい、歌ものが欲しいと。そのすり合わせが結構ありましたね」と懸念もあったという。だが、「攻めきってやろうという新海監督の強い意志を感じて。それは監督も言っていたし、励みにもなりましたね」と語るなど、印象的な音楽の誕生の裏側をのぞかせた。
さらに、曲を作るにあたり、新海監督からは「メインキャラクターの三葉と瀧が非凡な恋愛をしているのを間近で見て、それを歌にして追体験していいよ」と言われたという野田。「そのときにどんな言葉が出てくるだろうと思いながら歌詞を書いていきました」と振り返り、興味深い話の数々に観客は熱心に耳を傾けていた。(取材・文:壬生智裕)
第29回東京国際映画祭は11月3日までTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか都内各所で開催中