小松菜奈、前髪問題に悩む
10代のリアルな心理を描いたジョージ朝倉の同名コミックを実写映画化した『溺れるナイフ』で、共演した小松菜奈と菅田将暉が、原作の世界観にこだわる監督の独特な演出スタイルについて赤裸々に語った。
本作は、架空の田舎町・浮雲町を舞台に、ティーン誌の人気モデルの夏芽(小松)とそこで出会った少年コウ(菅田)との運命的な恋を描いた青春ラブストーリー。監督を務めたのは、「新世代ファンタジスタ」と称される新進気鋭の女性監督・山戸結希。原作の大ファンというだけあって、「ディテールのこだわりがハンパなかった」と菅田が言えば、ヒロインを演じた小松は「監督自身が夏芽だった」と撮影現場での監督のこだわりぶりを明かす。
中でも驚いたというのが、「前髪問題」。「監督から、『前髪はペたんこがいいです』って言われたんです。それで、いつもぺたんこにしていたんですけど、少しでも丸みが出ると、『あ、丸くしました? じゃあ直してください』って。それこそ、ストレートパーマをかけたようにピンと真っ直ぐにしていなくては監督からダメ出しがあるので、ヘアメイクさんが驚くぐらいでした」。その現場を思い出した菅田も「そうそう、前髪はおでこにピッタピタやったな」とツッコむ。
シリアスからコメディー、漫画原作のものなどさまざまな作品に出演し、多くの監督とタッグを組んでいる菅田も、山戸監督の独特の演出には驚いたらしく、「実は、監督は一度も僕の目を見てくれませんでした。理由は僕をコウだと思っているので、『恥ずかしい』って。恥ずかしがりながら演出する監督は初めてでした。あと、あるシーンでは喉ボトケの見え方まで、首の角度を細かくリクエストされました」と告白する。
「でも、世界観をきっちりと持っている監督なので、ついていけた」と菅田。そして「アクシデントもいっぱいあったけれど、奇跡的なこともいっぱいあって」と小松。「コウと夏芽のシーンで、二人が乗ったバイクの前を行く車の上から監督が、こっちに向かってセリフを言っているんです。監督が『雲!』と言ったら、『雲!』。『夏!』って言ったら、『夏!』。そうやって最後にトンネルに差し掛かったところで、いろいろなことを思い出して、急に感極まっちゃって涙声になってしまったんです。あんな奇跡、絶対にもう撮れないし演じられない。一生の思い出になりました」と語る。
唯一無二な映像感覚を持つと注目されている女性監督のもと、10代の眩しさや痛みをスクリーンに焼き付けただけでなく、まさに旬の若手俳優たちの今も切り取った青春映画が生まれたようだ。(取材・文:前田かおり)
映画『溺れるナイフ』は全国公開中