映画は商売人の手に落ちた…名匠イオセリアーニ、業界を痛烈批判!
7日、映画『皆さま、ごきげんよう』のメガホンを取ったオタール・イオセリアーニ監督が来日し、都内で記者会見を実施。昨今の映画業界について、「(映画は)商売人の手に落ちた」と痛烈な批判を展開した。
映画『皆さま、ごきげんよう』は、フランス革命期、近代の戦場、現代のパリという三つの時代を舞台に、愛すべき人間たちのエピソードを丁寧に紡いだ人間ドラマ。オリジナル脚本を基に同作を完成させたイオセリアーニ監督は、近年の映画業界における商業的側面に落胆している様子をうかがわせる。「映画は新しく生まれた芸術ですが、すぐに商売人たちの手の中に落ちてしまいました」と痛烈なコメントで会見をスタートさせ、「映画のおかげで、偉大な文学作品が卑俗なものにされてしまいました」とも発言。
さらに、「投機を行う人々、ただの映画屋になっている人々のせいで、映画は独立した芸術であるという思想すら破壊されてしまいました。本当に映画を実践したのは、イタリアのネオレアリズモの作家たち、バスター・キートン、ジャン・ヴィゴ、オーソン・ウェルズ、フェデリコ・フェリーニ、アンドレイ・タルコフスキー、グレブ・パンフィロフ、ギオルギ・シェンゲラヤです。彼らは映画をつくった人々でした」とコメント。
イオセリアーニ監督によれば、「一方にはボリウッド、一方にはハリウッドです。こうした二つの商業センターが、映画の雰囲気を毒してしまいました。映画は、持っていた自由な思想と発見の場という性質を無くしてしまったのです」とのこと。そして、「映画が一つだけ存在するとしたら、作家の映画に他ならないと思います。最初から最後まで、作家として責任をもって、作品としての映画をつくり出す人々が作家です。小説の翻案でもなく、商業的な脚本家が書く脚本でもなく、すでに生きた人の伝記を作るのでもない、ゼロから最後まで、作者として責任を持って独創的な作品を撮る人々こそが作家なのです」と熱弁をふるっていた。(取材・文:岸豊)
映画『皆さま、ごきげんよう』は12月17日より岩波ホールほか全国順次公開