妻夫木聡が語る盟友・小栗旬の才能と魅力「小栗だから愛せた」
巴亮介による衝撃のサスペンスリラー漫画を『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督が映画化した『ミュージアム』で、主人公の沢村刑事を演じた小栗旬と、沢村を極限まで追い詰める殺人鬼“カエル男”こと霧島早苗を怪演した妻夫木聡。二人は10年以上前から先輩・後輩関係でありながら、映画での本格的な共演は本作が初めてだった。壮絶な撮影を経て、妻夫木がいま改めて盟友・小栗の才能と魅力を語る。
映画はカエル男に妻子を拉致監禁された沢村刑事が、その策略にハマり、絶望のどん底に追いやられていく展開。意外性が話題を呼んでいる妻夫木のカエル男役だが、「相手が小栗だから、僕も安心して遊ばせてもらえた」と心中を明かす。物語が進むにつれ狂気し、壊れていく沢村を体現した小栗も、実は彼にしては珍しい等身大の役どころだった。妻夫木は、「みんな当たり前のように小栗の映画やドラマを観ていると思うし、実際、似たようなキャラクターを求められることが多いかもしれないけれど、よく見てほしい。毎回、違う顔をしているから。その作品ごとに違う顔になれるのが小栗のスゴいところだし、ここまで繊細な芝居ができる役者はなかなかいない。稀有な存在だと思います」と俳優としての小栗を高く評価する。
そんな二人が出会ったのは、妻夫木が二十歳で小栗が18歳のときだったという。共通の友人のホームパーティーで初めて顔を合わせ、それからどんどん仲がよくなっていったが、小栗によれば「その関係性は最初のときからずっと変わらない」らしい。「悩んでいるときは話を聞きたいなと思うし、自分の前をいつも歩いてくれている大切な先輩なんです」と妻夫木への特別な思いを強調した。
小栗との長い付き合いを、妻夫木は「歳は2つぐらいしか違わないから、後輩という感じでもないけれど、マメに連絡をくれるんですよね」とうれしそうに回想。小栗が『シュアリー・サムデイ』(2010)で初めて監督を務めたときにも、妻夫木は事前に相談を受けたのだとか。「一緒に撮るCMの撮影でロンドンに向かう飛行機の中で『今度、監督をすることになったんですけど、台本を読んでみてください』ってわたされて。読んだ後に、いろいろと意見を交換しながらワインを飲みまくっていたら、CAさんに『必ずお二人の足で降りられる量にしてくださいね』と注意されちゃったんですよね(笑)」と仲のよさが伝わる出来事を懐かしそうに振り返っていた。
そんな小栗と今回ガッツリ共演したことは、妻夫木にとって大きなことだったようで、「瑛太もそうだけれど、小栗も結婚してやっぱり変わったなと思う。ちゃんと“お父さん”なんですよ。それが今回の役にもかなり反映されている気がするし、僕も相手が小栗だから純粋に愛することができた。霧島は大好きな沢村のことを調べ尽くしているような役でしたが、そういう意味でも、昔からよく知っている小栗が沢村を演じてくれて本当によかったなと思います」と語った。
本作では、互いにリスペクトし合う小栗と妻夫木が、持てる力のすべてを出しきり、“正義”と“悪”のポジションで真っ向から激突する。観客は、彼らの本気とポテンシャルを全身で味わうことになるはずだ。(取材・文:イソガイマサト)
映画『ミュージアム』は11月12日公開