神木隆之介、4か月の将棋特訓!神クオリティーの実写化『3月のライオン』現場レポート - 将棋会館編 -
天才棋士・桐山零が、実際の将棋会館で盤の前に向かっている! 5月3日、東京・千駄ヶ谷の将棋会館で報道陣に公開された『3月のライオン』の対局シーンでは、まるで原作漫画の世界に迷い込んでしまったかのような衝撃的な光景が広がっていた。主人公・零役の神木隆之介、強面棋士・後藤正宗九段役の伊藤英明らが、原作のキャラクターが実体を持って現実世界に立ち現れたかのような役づくりで魅せた。
将棋会館でのロケは、実際の対局との兼ね合いもあり実現のハードルが高い中、ゴールデンウィークは本作の撮影で埋まったという。この日は獅子王戦トーナメントのシーンが撮影され、対局室では全6組の対局が進行。石田直裕四段、門倉啓太四段、千葉幸生六段、中座真七段、北島忠雄七段、飯塚祐紀七段らプロ棋士も参加するという本格ぶりだ。本作の撮影では通常の演技の段取りの前に指し手の確認が入るが、制服姿で盤の前に座る神木は、スタッフが指し手を読み上げるのにあわせてよどみなく駒を進め、すっかり将棋が身についてきた様子。背中を丸めて盤にのめり込むように集中する後姿は、何か重いものをその背に負いながら将棋に向かう零そのものだった。
一方、後藤役の伊藤は圧倒的なオーラを放っていた。撮影の合間は和やかに神木と会話を交わしていた伊藤だが、後藤が勝利を手にして対局室から足早に去っていくシーンでは威圧的ともいえる雰囲気を漂わせる。少し離れたところから段取りを見ていた神木も「『負けましたって言えよ』みたいな(雰囲気ですね)」と苦笑をもらすほど周囲を圧倒する姿は、まさに原作の後藤と瓜二つ。本番ではそのオーラも影響してか、負けを宣言して茫然自失になる対局相手の様子があまりにリアルで、スタッフの間で笑いが起こるほどの迫力だった。
メガホンを取る大友啓史監督は、監修・指導棋士と相談しながらエキストラについても「みんなシャッキリしすぎている」「背筋が良すぎないように猫背で」と細部までこだわり抜いた指示を飛ばす。プロ棋士らによる監修チームの下、周囲のエキストラの手つきまで確認する徹底ぶりで、もちろんそのこだわりはキャスト陣も同様だった。
先日、主演の神木は日本将棋連盟からアマチュア初段免状を授与されたが、谷島正之プロデューサーいわく、「神木さんは4か月くらい(将棋の特訓を)やっています。『おじいちゃんと子供の頃からやっているから、僕結構将棋知ってるんですよ』と言われてましたけれど、最初に2時間練習した時に、手が震えた時があった」。俳優陣は殺陣の練習のごとく、いかに“プロ棋士らしく”指すことができるかの特訓を重ねたという。
中でも一番神経質になったのは天才棋士・宗谷冬司役の加瀬亮だ。「神の役でしょう、将棋の。だからもっとも美しく、エレガントに見せなきゃならない。かつ、(モデルは)羽生(善治)さんなわけだから、リアリティも持っていなきゃならない。ものすごく真剣で、『将棋が上手くならなくていいんです。いかに美しくプロとしての指し方ができるかだけ教えてください』って」。
さらに、谷島プロデューサーは「物語上の登場人物の感情と、将棋の盤上、棋譜のストーリーの感情を両方同時に考えなきゃいけない。例えば、ここで打った瞬間にどんな動揺を指先で演じるかとか、顔をするかという、感情を二重に考えなければいけないんです。そこを合致させるのが難しい。脚本のストーリーと棋譜のストーリーが二重に演者に押し寄せてくる。しかも動きがないんです、将棋ですから。手足、肉体を封じられてる訳です」と将棋を題材にした本作ならではの苦労を明かした。
『3月のライオン』は、中学生で異例のプロ将棋棋士デビューを果たした零が主人公。幼い頃に交通事故で家族を失った心の傷を抱えた零が、同じ下町に住む川本家の三姉妹や周囲の人との交流、数々の対局を通して、人間としても棋士としても成長していく姿を活写する。(編集部・吉田唯)
映画『3月のライオン【前編】』は2017年3月18日、『3月のライオン【後編】』は2017年4月22日より全国公開