『この世界の片隅に』片渕須直監督、ヒットの要因を分析
アニメーション映画『この世界の片隅に』の片渕須直監督が19日、東京・三鷹市で行われた第7回三鷹コミュニティシネマ映画祭でトークショーを行った。
『この世界の片隅に』片渕須直監督、ヒットの要因を分析「戦時中ものだけど実は新しい」 画像ギャラリー
三鷹市に映画館を復活させたいと願う市民ボランティア有志と、映像文化で街を活性化させたい三鷹市の第三セクター(株)まちづくり三鷹が実行委員会形式で開催している本映画祭。この日は片渕監督の特集が組まれ、『アリーテ姫』『マイマイ新子と千年の魔法』の2作品が上映された。
現在公開中の『この世界の片隅に』は戦時中の広島県呉市を舞台に、ある一家に嫁いだ少女が戦禍の激しくなる中で懸命に生きていこうとする姿を追い掛ける片渕監督渾身の一作。12日に公開され、上映館数100館に満たない作品でありながら、観客動員数が2週連続10位を記録するなど現在大ヒットを記録しているが、片渕監督はヒットの要因について質問を受けると、「やっぱり新しいんだと思う」と分析。「戦時中ものだけど実は新しい。そういうものを求めていた人がたくさんいらっしゃったということだと思うんです」としみじみ。
作品がクラウドファンディングで資金を集って製作されたことについても、「以前、『マイマイ新子』の時に割と早く上映が終わっちゃったんですけど、その後、『上映を続けてください』という署名活動が起こったんです。そういうのが(今回クラウドファンディングをやった)原型になっている」と説明。
「映画は自分たちだけが一生懸命『この映画当たるんだけど見てくれよ』とやっていても始まらなくて、お客さんのほうがどれくらい実際見たいのかという反響がすごく大事」と述べ、「(署名の時に)見たいという人がこれだけいるんですよというのが見事に目に見える形になった。映画というものがどうやって支えられているか。映画って実はお客さんと作り手や映画の間にまだいろいろとステップがあるんです。そういうものに対して説得力を持つものになる。この映画はこれくらいのお客さんが味方についてくださっているんだという、それが示せたのは大きかった」とその成果についても熱っぽく話していた。
トークショーには『マイマイ新子と千年の魔法』『この世界の片隅に』の2本の片渕作品に参加した声優のたちばなことねも出席した。(取材・文:名鹿祥史)