デンゼル・ワシントンとの共演シーンを23回も撮り直し!話題のオスカー候補作
映画『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』などで知られる演技派女優ヴィオラ・デイヴィスが、第89回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされている映画『フェンシズ(原題) / Fences』について、1月17日(現地時間)ニューヨークAOL開催のイベントで語った。
舞台は1950年代のピッツバーグ。元野球選手のトロイ(デンゼル・ワシントン)は、今ではゴミ収集作業員として生計を立て、妻ローズ(ヴィオラ)と息子コリーを養っていた。厳しい人種差別がある中で、彼は家長として妻や息子に対して支配的にふるまっていたが、いつしか彼らに反発され、権威が徐々に失われていく。ピューリッツァー賞を受賞したオーガスト・ウィルソンの戯曲「フェンス」を、デンゼルが監督・主演・製作で映画化。第89回アカデミー賞では作品賞を含む4部門でノミネートされている。
2010年にブロードウェイで同戯曲を演じたヴィオラは「あのときは114もの公演を行ったの」と振り返る(デンゼルも同役で共演)。今作で演じたローズは、自身のキャリアの中で最も難しい役だったのか。「それはどうかしら。舞台で演じたギリシャ悲劇も難しかったし、今作もだいぶ苦労した。デンゼルには13ページもの独白シーンがあるの。わたしも4ページ分の独白シーンがあった。その場面は、相手をののしったりするから、感情を持続させながら、せりふが心に響くようにしなければならない。オーガストの戯曲は、まるでシェイクスピアの戯曲のように、言葉を抜くことができない。もし抜いたら、そのせりふの詩的な感覚が失われるから」。
ローズがトロイに反発するシーンは、「23テイクも撮り直した」とのこと。「演技はロケット工学のように難しくないし、ただ俳優としてその技能を披露するだけ。でも演技はアートだと思うの。今回は、演技中の息遣いや、役への入れ込み方など、舞台で培ったテクニックを、映画にも当てはめることができた」と地道な舞台演技が、今作に反映されたことを明かした。
今作でヴィオラは、ゴールデン・グローブ賞助演女優賞を受賞している。黒人女優として成功しているわけだが「(成功した今でも)戦いね! でも以前よりは良くなった。今年は『ヒデン・フィギュアーズ(原題)』(オクタヴィア・スペンサー出演)や『ラビング 愛という名前のふたり』(ルース・ネッガ出演)などがあって、人々は黒人女優の重要性を理解し始めている。個人的に、わたしたち黒人女優は複雑だということも理解してほしい。今作では普通の家族が描かれていて、黒人がどれだけほかの人種に似ているか理解してほしい」と語った。(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki)