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『オトナ帝国』『戦国大合戦』結末違う可能性あった…映画救ったしんちゃん作者の一声

『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』より
『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』より - (C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2002

 いまやアニメというジャンルを超えて名作とうたわれている『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001)、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(2002)。なによりもそのラストこそが名作と呼ばれているゆえんだが、両作品を手掛けた原恵一監督によれば、その結末を描く際にさまざまなところから大反対を受けたという。しかし現在の形で日の目を見ることができた理由には、原作者である故・臼井儀人氏の存在があった。(以下、ネタバレあり)

【場面写真】『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』

 『映画クレヨンしんちゃん』シリーズの制作スタジオは、『ドラえもん』などのヒット作も抱えているシンエイ動画。かつて同スタジオに所属していた原監督いわく、『しんちゃん』はスタジオの中でも異端児として、制作現場で自由に作れる雰囲気があったという。『オトナ帝国の逆襲』は主人公のしんのすけたちの前に、ノスタルジーを求める大人を洗脳していく二人組のケンとチャコが立ちはだかる物語。同作のラストは当初これまでの『しんちゃん』映画の流れを意識した“おバカな戦い”で締めくくられる予定だった。

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 しかしケンとチャコというキャラクターを作り上げていく上で、この筋道で終わらせたくないと感じた原監督は別の考えにたどり着く。「ケンとチャコは野原一家の勝利を認めるわけにはいかないが、彼らとは戦わない。ならば彼らは死ぬしかない。でも死のうと思った彼らの死を、キジバトの親子が防ぐというラストを思いついた時にものすごく興奮したんです」。

『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』より - (C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2001

 だが監督はこのアイデアを考え付いた時に、『オトナ帝国の逆襲』が“しんちゃん”ではなくなってしまう不安を感じたという。実際関係各所から反対を受けた。だが監督自身悩みに悩みぬき、現在の『オトナ帝国の逆襲』のラストに収まった。「『しんちゃん』チームから外されても、このシーンを作れるなら『それでもいい』と思った」と振り返る監督。そして実際に劇場で公開された『オトナ帝国の逆襲』の反響ぶりに、逆に「僕が“しんちゃん映画の形”にこだわりすぎていたんだ」と気付かされたという。「映画ってこんなに自由なんだってお客さんに教えてもらったんです」。

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 そして『オトナ帝国の逆襲』の次作となる『戦国大合戦』では、さらにもう一歩踏み込む。死に至らなかった『オトナ帝国の逆襲』ではできなかった、重要人物の死で物語を終わらせた。前作以上の大冒険ぶりに、『オトナ帝国の逆襲』の時以上に反対を受けたという。当時のことを原監督は、「『しんちゃんで子供を泣かしてどうするんだ』と怒られました。でも『これは素晴らしい作品です』とかばってくれた方もいらっしゃって」と語る。しかし原監督も「重要なキャラクターの死で結ばれなければ『意味がない』」と粘りに粘って平行線に。そして最終的に原作者である臼井氏に決断を委ねることになった。「そこで臼井さんに『このままでいいです』といただけたんです」。

『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』より - (C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2002

 臼井氏は映画作品においてはプロット等の確認は行いつつも、「しんちゃん映画を新鮮な気持ちで観たいので任せます」と『しんちゃん』映画の一人のファンとして支え続けてきた。その臼井氏だったからこそ救われた結末。原監督は「臼井さんの不在というのは大きいですよね。ほかの作品でも最終決定権を持つ方がいらっしゃらなくなることはものすごい大きなこと。だから僕はなんて運がよかったんだろうと思います」と話す。彼は大事な2作品を経て今は「超えちゃいけない一線なんてない」と感じているという。『映画クレヨンしんちゃん』は4月15日に公開される『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』で25作品目となる。この先人たちの背中を見てきた作家たちが、新たな『しんちゃん』を作り上げている。(編集部・井本早紀)

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