「攻殻」バトー役で追求した演技 ハリウッド版俳優が語る容姿だけじゃない難しさ
士郎正宗のSFコミック「攻殻機動隊」をハリウッドで実写化した『ゴースト・イン・ザ・シェル』で、 スカーレット・ヨハンソン演じるヒロイン“少佐”をサポートする、バトー役を務めた俳優のピルー・アスベックが、人気キャラクターに挑んだ思いを語った。
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劇中の大柄でどっしりしたバトーと違い、スラッとした立ち姿の似合う紳士といった印象のピルー。「日本のプロデューサーにも、映画よりスマートだねって驚かれたよ。でもそれが僕らの仕事。あの姿にもなれることが映画のマジックなのさ」と笑みを浮かべる。
現在35歳、デンマーク出身のピルーは、自国の文化がほかの国で作品になる気持ちが理解できるという。「僕はとても小さい国の出身だ。人口500万くらいのね。そんな僕らの伝統的な文化がヴァイキングの歴史。心から誇りに思っているから、映画やドラマで彼らが忠実に描かれているとうれしくなる。この映画でも、日本の人たちや漫画・アニメのファンが、それと同じような気持ちを感じてくれるとうれしいな」。
そんなピルーが初めて「攻殻機動隊」に触れたのは14歳のころ。押井守監督の長編アニメ『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』を観たのがきっかけだった。「自分のアイデンティティーを模索するというテーマにとても共感した。そういったことを意識する年ごろだったから、これは僕のことを描いている! って思ったね」という彼は、同時に「ただ、アニメのバトーは僕よりもちょっと年上だったから、実写版に出るとなったときは、共通点が見出せなかった」と告白する。
その言葉の通り、ハリウッド版のバトーはアニメよりも若々しくてよりパワフル。ピルーは「僕が演じたバトーは、士郎正宗さんのコミックにより影響を受けた。髪形を『イノセンス』のようなポニーテールじゃなくて短髪にしたのもそういう理由。コミックの彼が僕と同じようにピザとビールが好きな男だったことも、演じるうえでブレイクスルーになったよ」と明かす。
一方で、見た目の再現は、演技のうえで最も重要な要素ではなかったというピルー。「バトーは少佐のことも、機械のことも、犬のことも愛する男。人間的な心を持っていて、観客が最も共感できるキャラクターなんだ。僕にとって大事だったのは、彼が守護者であるということ。少佐が振り返れば、そこに必ずバトーがいるといったようなね。少佐役のスカーレットとは“どうやって恋愛(描写)なしにラブストーリーを表現するのか”をよく話し合ったよ。お互いに距離を置いているけど、つながっているのを表現するうえでね」。
ちなみにバトーといえば、まん丸の義眼。ある理由により、肉眼と義眼、両方の状態のバトーを演じたピルーは、「あの義眼を着けているときは、トンネルをのぞいているみたいで何も見えないんだよ! 撮影中は物にぶつかって大変だった。でも実際、大きな助けになったね。おかげで、仮面を着けるようにバトーになりきれた」と振り返っていた。(編集部・入倉功一)
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』は全国公開中