キム・ギドクが原発事故を題材に描く衝撃作が5月公開
韓国の鬼才キム・ギドク監督が、福島原発事故を題材に中江翼、堀夏子ら日本人俳優を主演に迎え、日本で撮影を敢行した映画『STOP』(2015)が、5月13日より日本公開されることが決定した。震災時に発生した福島第一原発のメルトダウンにより、東京への移住を余儀なくされた若い夫婦の受難を描く物語で、約2年もの間劇場公開に至らなかった衝撃作だ。
【動画】キム・ギドク監督が原発事故を題材に描く『STOP』予告編
予告編は、震災が発生したときの様子から幕を開ける。やがて立ち退きを迫られ家を後にした夫婦のもとへ「一週間前、福島の産婦人科で診察を受けましたか?」という連絡が入り、「時間はありません!」と詰め寄るスーツ姿の男、「何が何だかわからなくて怖いです」と混乱する妻、「もし子供に問題があったとしても俺たちの子供だ、俺たちが責任をとる」とスーツの男に訴える夫、ただならぬ様子の男女が映し出される。そこからガムテープで手足の自由を奪われた妻の姿や、激しく言い争う夫婦、「全部電気が悪いんだ」とつぶやく夫、出産の瞬間を迎える妻などめまぐるしい断片映像が続く。
第20回釜山国際映画祭、第52回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭(チェコ)、第20回ケララ国際映画祭(インド)などの海外の映画祭で上映され、日本では2016年2月に第26回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映されるも劇場公開されることはなかった本作。監督・脚本・撮影・録音・編集・プロデューサーを兼任したギドクは、「日本と韓国は、過去の不幸な歴史の為に、あまり仲が良くない状況です。そんな中で作った今回の『STOP』ですが、これは韓国人だとか日本人だとか、そういったことは関係なくて、人類の安全の問題だと思っています」と普遍的なテーマを扱っていることを強調。
「6年前の3月11日にはたくさんの方が亡くなりました。亡くなった方のご家族のことを考えると、非常に心が痛みます」と東日本大震災の犠牲者に哀悼の意を捧げるとともに、「原発の問題は、終わっていません。終わっていないどころか、これからも、どんどん深刻なことになっていくかもしれません。世界中の技術者を集めてでも、早く自然な状態が戻ってくるようなことになればいいなと思っております」と問題意識を表している。
作品収益の一部は、東日本大震災の被災地である福島、昨年4月に発生した熊本地震の被災地・熊本に寄付されるという。(編集部・石井百合子)
映画『STOP』は5月13日より新宿K's cinema・キネカ大森にて、6月24日より横浜ジャック&ベティにて公開