『羊たちの沈黙』ジョナサン・デミ監督、死去…レクター博士&クラリスも追悼
映画『羊たちの沈黙』などで知られるジョナサン・デミ監督が現地時間26日朝、ニューヨーク・マンハッタンの自宅で食道がんによる合併症で死去した。73歳。デミ監督の代理人が発表した。
B級映画の帝王ロジャー・コーマンの門下生としてキャリアをスタートさせたデミ監督。『女刑務所・白昼の暴動』『クレイジー・ママ』『怒りの山河』をコーマンのスタジオで手掛け、『メルビンとハワード』『サムシング・ワイルド』といったコメディーや、コンサート映画に革命を起こした、ロックバンド、トーキング・ヘッズのドキュメンタリー『ストップ・メイキング・センス』などを続けざまに発表したが、何と言っても彼の名を広く知らしめたのは、1991年公開のホラースリラー『羊たちの沈黙』だ。
トマス・ハリスの同名小説を基に、FBI訓練生クラリス(ジョディ・フォスター)が連続猟奇殺人事件を解決するため、監禁中の元精神科医で殺人鬼レクター博士(アンソニー・ホプキンス)に助言を求めるさまを描いた同作は、興行的にも批評的にも大成功。第64回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞(アンソニー)、主演女優賞(ジョディ)、監督賞、脚色賞の5部門受賞を果たした。
アンソニーは「ジョナサンの訃報を聞き、とてもショックを受けており、悲しい。彼は最高の人物の一人だった。本当にナイスガイで、偉大な精神を持っていた。彼と一緒に居ると、毎日ハイタッチをしたくなるような感じだった。ご家族に哀悼の意を表します」と故人を追悼。ジョディも「友人でありメンターでもあるジョナサンを失い、悲しみに暮れています。ジョナサンは彼のコメディー作品のようにおかしくて、彼のドラマ作品のように深みのある人。真のエネルギーにあふれ、クリエイティブな人々をいつも応援していました」「彼をとても愛しています」と声明で悲痛な思いを明かしている。
デミ監督は『羊たちの沈黙』の後も、メジャースタジオがHIVと同性愛を扱った最初の作品の一つとされる『フィラデルフィア』(エイズのため不当解雇されたゲイの弁護士を演じたトム・ハンクスは自身初のオスカー受賞)、ある一家の結婚式を中心に、優等生の姉と問題児の妹の抱える問題をドキュメンタリータッチで映し出した『レイチェルの結婚』(主演のアン・ハサウェイは自身初のオスカーノミネート)といった意欲作を発表してきた。多大な貢献をしてきたデミ監督の死に、映画界は悲しみに包まれている。(編集部・市川遥)