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シェイクスピアもプラトンも…なぜ現代ではなく過去を描くのか?

マラガ映画祭にやってきたフェルナンド・トルエバ監督
マラガ映画祭にやってきたフェルナンド・トルエバ監督

 1992年の映画『ベルエポック』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したスペインの名匠フェルナンド・トルエバ監督が、ペネロペ・クルス主演作『美しき虜』(日本未公開・1998)の続編にあたる新作映画『ザ・クイーン・オブ・スペイン(英題) / The Queen of Spain』について語ると同時に、自らの映画づくりのスタンスを明かした。

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 トルエバ監督が脚本も担当した『ザ・クイーン・オブ・スペイン(英題)』は、前作『美しき虜』のおよそ20年後の世界を舞台に、ハリウッドスターになった主人公マカレナ(ペネロペ)がスペインへ戻り、カスティーリャ女王を題材にしたブロックバスター映画をつくろうと試みる姿を描いたコメディードラマだ。

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 「前作をつくったときに、家族のようにとても素晴らしい時間をみんなで過ごせたことを覚えていて。またそういう時間を過ごせたらいいなと思って、この題材に戻ってきた」と続編製作の理由を語るトルエバ監督。「アプローチを変える必要はないと思ったけど、ただ時代設定は合わせなければいけないと思った。最初のはスペイン内戦中でのベルリンで、2作目では1950年代のフランコとアメリカについて描きたいと思った」と時代設定にはこだわりがあったことを明かす。

 トルエバ監督は過去を舞台にすることの醍醐味について、次のように続ける。「現在ではなく過去について描くことは、現代を描く以上に現代について語っていると思う。(過去を舞台にすることで)単刀直入に現在について語ることができる。現代において混乱を招いているものを取り除くことができるし、あまり現代に近すぎると気づかないことだってあるからね。シェイクスピアは彼の時代のドラマを書いたことがない。彼はいつも過去に題材を探していた。プラトンもそうだ。過去は現在が集約された形だと思う。だから過去を舞台にすると、要点が外れないんだ」。

 とはいえ、映画を通して、現代批判をしたいわけではないという。「ストーリーを伝えるのが第一。もちろんそのストーリーを通して、観客が世界に対して向ける目を変えるということはあると思う。それは美的にかもしれないし、イデオロギー的にかもしれないし、社会的にかもしれない。一個人であるアーティストが、どう世界と向き合っているのかということをストーリーを通して提示できると思う」。さらには、ストーリーでもコメディーというジャンルを選ぶことについて、「僕にとって本当に大事なのは、映画で人々を笑わせる、楽しませることにつきるんだ」と付け加えていた。

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マラガ映画祭にやってきた『ベルエポック』キャスト&スタッフたち

 しかしながら、あえて観客の好みを分析したりすることはしないそうで、「マーケティングしようとしまいと、映画を気に入ってくれる人は気に入ってくれるだろうし、それでいい。観客とはもっと信頼のある関係を築きたいと思っているから、マーケティングなどしない。映画づくりはマーケティングではない。大規模な工場でつくられたような映画は嫌いなんだ」と一蹴。観客をデータとして捉えないトルエバ監督のそのスタンスが、長年にわたって人々の心をつかむ作品につながっているのだろう。今年、『ベルエポック』公開から25周年を迎えたトルエバ監督は、マラガ映画祭にて表彰を受けていたばかりだ。(編集部・石神恵美子)

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