リリー&亀梨、牛との遭遇に困惑
映画『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』の吉田大八監督が、三島由紀夫の異色SF小説を自ら脚色&映画化した『美しい星』で、親子として共演したリリー・フランキーと亀梨和也が、謎だらけの撮影を振り返った。父・重一郎(リリー)は火星人、長男・一雄(亀梨)は水星人、長女・暁子(橋本愛)は金星人、そして母・伊余子(中嶋朋子)は地球人として突如覚醒する家族が巻き起こす騒動を描く本作の撮影について、リリーと亀梨は「現場に入るまでどうなるかまったくわからなかった」と口を揃える。
撮影が行われたのは昨年の春先。宇宙人とコンタクトをとるシーンで行った屋外ロケの中でも、家族が全員で夜の山中をさまようクライマックスシーンは、肉体的にとくに過酷だったという。「あのシーンは俺よりもみんなのほうが大変だったと思います。寒い山の中、道なき道を、亀梨くんが俺をおぶって歩いてくれて」とねぎらうリリーに亀梨は、「お父さんはあのとき病気で痩せて軽かったのでなんとかなりました」と微笑みかける。するとリリーは「亀梨くんには安心して身を委ねましたけど、牛が信用できなくて(苦笑)」と恐怖体験を語りだす。そう、このシーンでは家族の前に牛が突然現れて、重一郎を運んでくれるのだ。亀梨曰く「橋本愛ちゃんは牛を見た瞬間にテンションが上がって覚醒していた(笑)」が、リリーは「牛が走るとこんなに怖いの? 家族が脚を踏まれるんじゃないの?」とヒヤヒヤしっぱなしだったとか。
また、撮影現場には何かあったときのためにもう一頭の牛が代役として待機していたという。結局出番のなかった予備の牛について、リリーが「『俺じゃねえんだ……』と恨めしそうだった」と言えば、亀梨も「すっごく悲しそうな目で僕らの撮影を眺めてました(笑)」と振り返る。
ちなみになぜ牛なのかという説明は一切ない。撮影現場でも、吉田監督はキャストに何も説明しなかったという。「『美しい星』は大八さんの好きなものが、大八さんの中で完結している」と言うリリーに、亀梨が「僕らはそこに身を委ねました」と続けた。(取材・文:須永貴子)
映画『美しい星』は全国公開中