審査員ウィル・スミス、説得実らず…イチオシ映画の無冠に「民主主義って最低」
第70回カンヌ国際映画祭
現地時間28日、第70回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門の授賞式後に審査員会見が行われ、米俳優のウィル・スミスが、自身のイチオシ映画が無冠に終わったことに「民主主義って最低」とこぼして会場を沸かせた。
審査員長のペドロ・アルモドバル監督(スペイン)、ウィル、女優ジェシカ・チャステイン(アメリカ)、女優ファン・ビンビン(中国)、『ありがとう、トニ・エルドマン』のマーレン・アデ監督(ドイツ)、『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク監督(韓国)、『グランドフィナーレ』のパオロ・ソレンティーノ監督(イタリア)、『たかが世界の終わり』の作曲家ガブリエル・ヤーレ(フランス)、監督・女優のアニエス・ジャウィ(フランス)の9人から成った今年の審査員団。
受賞作決定までは難航したかとの問いに、アルモドバル監督は「血が飛び散るというようなことはありませんでした。互いをとても尊重していましたから。しかし、それは皆が全く同じ意見だったという意味ではありません。わたしたちはとても熱心に議論し、時に相手を説得できたり、できなかったりしましたが、結論はとてもスムーズに出ました」と活発な議論の上で、最終的には民主主義的に決定を下したと明かす。
ハンガリーの記者からは、リューベン・オストルンド監督の『ザ・スクエア(原題) / The Square』(スウェーデン)が最高賞パルムドールを受賞して満足だとしながらも、自国の『ジュピターズ・ムーン(原題) / Jupiter's Moon』(コーネル・ムンドルッツォ監督)が少しでも話題に上がることはあったのかという質問が出た。空中に浮く能力を手に入れた難民の青年を描く異色作だが、記者の反応は今一つ。その一因は、難民について描いているのかと思いきや、それはあくまで設定の一つであり、宗教的な要素がメインに据えられた作品で混乱させられたからだろう。
この質問にジェシカは「それについてはウィルよ」と即答すると、ウィルは「僕は『ジュピターズ・ムーン(原題)』が本当に大好きだ。とても信仰心の強い家庭で育ったから、完璧に理解できた」と熱心にコメント。しかし、他の審査員たちを十分に説得することはできなかったようで「時に、民主主義って最低だね」とこぼして爆笑をさらうと、「本当に素晴らしい映画だと思う。何度も何度も観たいと思う映画の一つだ」と絶賛の手を緩めなかった。
会見のみならず、授賞式でも場の盛り上げ役だったウィル。第70回記念名誉賞のプレゼンターを担当した際には、受賞者のニコール・キッドマンがすでにカンヌを発っていたことから「きっとこんな感じでしょう」とニコールに代わって感激の演技を披露(口を押えて声を震わせながら「ア~……メルシーボークー! マダム&ムッシュー」)。受賞スピーチ後、受賞者はプレゼンターと並んでの写真撮影があるのだが、そこでも「僕一人ですが写真は撮りたいと思います」とカメラマンの方へ颯爽と歩いていき、胸に手を当て、まるで自分が受賞したかのようなポーズを決めて会場を大いに沸かせていた。(編集部・市川遥)