向井理、野際陽子さんを偲び「いまだに信じられない」
俳優の向井理が19日、東京・神田明神で行われた映画『いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~』公開直前イベントに登場し、本作に出演する女優の野際陽子さんが13日に亡くなったことについて、「元気で明るい野際さんしか知らないので、いまだに信じられない」と事実を受け止められない様子を見せながらも、「一つの作品として多くの人に野際さんの姿を見てもらうことが恩返しになるのかな……」と思いを吐露した。この日は尾野真千子、深川栄洋監督も出席した。
本作は、向井の祖母・芦村朋子の手記をもとに、夫・吾郎(向井)と妻・朋子(尾野)が戦後の混乱期、日本人としての誇りを失わず、誠実にたくましく生きる姿を描いた壮大な愛の物語。野際は現代の81歳の朋子役として病をおして出演。本作が映画としては遺作となった。
向井は「作品をやるにあたって、野際さんから祖母がどういう人だったか? という長い質問状をいただいたり、写真を貸してほしいとか、ご自分から意欲的に実在の人に似せていこうという姿勢を見せていただいた」と打ち明けると、「真面目で、とにかく役のことを一番に考えていらっしゃった」と最後まで女優として生きた野際さんの姿を紹介。そして、その努力が実り、「やっぱり似てました。雰囲気や方言が似ていて、ばあちゃんがいる! ってびっくりしました」とその手腕を称えた。
尾野は、先月に野際さんが本作に寄せたコメントから「尾野真千子さんが大切に演じられた若い朋子のイメージを壊さないことも常に心に入れていました(一部抜粋)」と伝えられると、「つながりってこういうことなんだと思います。自分がこの映画で伝えたいことの一つに、世代を超えて“受け継ぐ”ということがあるので、野際さんから受け継いだことがわたしやいろんな人を通して作品となって受け継がれていけばいいなと思います」としみじみと語った。
深川監督は「撮影前に手術をされて、この作品で現場復帰すると聞いていたので僕らの方でもケアをしなきゃと思っていたのですが、すごく明るくて(逆に)僕らの緊張をほぐそうとしてくれて、全然大丈夫だと思いました」と述懐。感情が大きく揺れる長めのシーンにおいて、1カット撮影という肉体的にも精神的にも負担がかかるようなことをお願いしても、撮影後は清々しく笑ってくれたという。しかし、昨年2月に撮影したシーンの撮り直しを11月に依頼したところ、野際さんがスタッフに「もう撮り直しはないわよね? 大丈夫よね?」と確認したそうで、深川監督は「『立つ鳥跡を濁さず』じゃないですけど、自分の幕引きをしたのかな……と頭に残っていた。すごく強くて優しくて凛とした昭和のいい女優さんが天に召されたのかな……と感慨深かったです」と故人に思いを馳せた。(取材/錦怜那)
映画『いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~』は6月24日より全国公開