男子禁制の寄宿舎で唯一の男を巡る愛憎劇…ソフィア・コッポラ新作はリメイクではなく女性解釈版?
人気女性監督ソフィア・コッポラが、新作『ザ・ビガイルド(原題) / The Beguiled』について、ソフィア作品常連のキルステン・ダンストと共に、6月22日(現地時間)ニューヨークで行われたAOL開催のイベントで語った。
本作は、ドン・シーゲル監督&クリント・イーストウッド主演の映画『白い肌の異常な夜』(1971)を、ソフィアが女性の視点でリメイクしたスリラー。南北戦争時代、バージニア州の森にひっそりとたたずむ女学院の少女が、ある日、重症の兵士マクバニー(コリン・ファレル)を見つけ、彼女たちが暮らす男子禁制の寄宿舎に連れてくる。マクバニーの体力が回復すると次第に、唯一の男性である彼を巡り、校長マーサ(ニコール・キッドマン)、教師エドウィーナ(キルステン)、生徒のアリシア(エル・ファニング)ら女たちによる愛憎劇が起こり……。
本作を手掛けた経緯についてソフィアは「女性グループが敵軍の兵士をかくまうオリジナル映画は、クリント演じるマクバニーの視点からほぼ描かれていたの。そこで今度は、女性の視点から新たなストーリーを想像してみたらどうかと思ったのよ。作家トーマス・カリナンの原作も女性の観点でつづられていたしね」と話す。また、オリジナル版ではマクバニーの過去が描かれるが、今作では観客も劇中の女性たちと同時に、マクバニーがどんな人物なのかを理解していく仕組みになっていることも明かした。
教師のエドウィーナのキャラクターについてキルステンは「ソフィアにも言われたけれど、エドウィーナはわたしとは全くかけ離れていて、エクボさえ見えないくらい張り詰めた性格の持ち主なの。とても保守的な価値観を持っているから、マクバニーを招き入れたマーサ校長に腹を立てたり、招き入れたこと自体におびえていたりするの。けれど良心的なキリスト教徒の女性として、若い女子生徒の模範になるように行動するうちに、コリン演じるマクバニーに巧みに操られて、彼のことを好きになってしまうのよ」と説明した。
本作では、舞台となる女学院のロケーションと映像美も素晴らしいが、それについてソフィアは「『プロヴァンスの贈りもの』のフィリップ・ル・スールが撮影監督を務めたの。撮影はニューオーリンズにある実在の家を使用して行ったわ。女学院のインテリアは、実は女優ジェニファー・クーリッジの家の内装なのよ。屋外は過去に黒い歴史(奴隷労働)を持つプランテーションで撮影したわ」と解説。それぞれが持つ歴史もまた今作を引き立たせているようだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)