レイプ被害者がその犯人を捜し出す…変態監督、衝撃すぎる新作の解釈を観客にゆだねる
衝撃作『エル ELLE』で第89回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたイザベル・ユペールが23日、「フランス映画祭2017」の一環として都内で行われた同作上映会にポール・ヴァーホーヴェン監督と来場し、会場のファンから熱いラブコールを送られた。
『氷の微笑』のヴァーホーヴェン監督がイザベルとタッグを組んだ本作は、レイプ被害者の女性が犯人を捜しだそうとするさまを描きだした衝撃作。壇上に立ったヴァーホーヴェン監督は、「今回がおそらく5回目くらいの来日になると思うが、今回は特別な作品になった。それも、隣にいる方のおかげだね」とあいさつ。一方のイザベルも「コンニチハ!」と日本語であいさつをすると、「ここにいられることをうれしく思いますし、それがポールと一緒であることが大変うれしいです」と付け加えるなど、相思相愛ぶりを見せつけた。
本作の冒頭は、覆面をかぶった男が突如家に押し入り、主人公のミシェルに激しい暴行を加えるというショッキングなシーンから始まる。そんなイザベルに対して「(撮影で)大変なところはなかった?」という質問が投げられたが、それには「なかったわね。この映画を観るのは大変だろうけどね」と笑ってみせるイザベル。「でも一番大変だったのは小さなスズメが死んでいるのを見つけるシーンかしら。なぜかというとこの映画のテーマは命だから。例え小さな生き物であってもミシェルが救おうとすることを通じて、命の大切さを描こうとしているの」と続けた。
暴行の被害者でありながら、その後の彼女の行動は非常にミステリアスであり、複雑でもある、ということから、会場からの質問も「ミシェルの本当の正体をどう解釈している?」「このキャラクターについてディスカッションはした?」「過去のとある事件が彼女になにかしらの影響を与えている?」などなど、この作品の本質をつかむべく、二人から何かしらのヒントや解釈を探ろうとするものが続いたが、それらの質問に対してヴァーホーヴェン監督は、「仮にわれわれがキャラクターについてディスカッションしたとしても、それはフロイト的な分析にしかならない。それは助けにはならないと思った」と返答するなど、主人公の行動はあくまでも観客の解釈に委ねている様子がうかがい知れた。
昨年のフランス映画祭に続き、今年も来日したイザベルに感謝の思いを表し、「毎年来てください」とラブコールを送る男性客の姿や、「(ヴァーホーヴェン監督がメガホンをとった)『ロボコップ』はわたしの子ども時代のヒーローでした」と語る女性客の姿が見えるなど、二人の来日に感激している様子の会場内であった。(取材・文:壬生智裕)
「フランス映画祭2017」は6月25日まで有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇にて開催中