石原さとみ、意識が変わった20代「中盤まではつらかった」
女優・石原さとみが「20代最後に撮影した映画で、命の大切さに愛で気づくという素敵な話をエンタメとして、わかりやすく伝えられたことがうれしかった」と語った『忍びの国』。その言葉通りポップな作りながら、本作には現代社会に浮かび上がるさまざまな問題が内在している。30歳になり、作品の持つテーマをしっかりキャッチし、メッセージとして伝えていきたいという石原。そこには女優として、そして女性としての、しっかりとした信念や誇りがあるようだ。
コンプレックスを個性とは言わない
『忍びの国』は「のぼうの城」などで知られる作家・和田竜の小説を、嵐・大野智主演で実写化したアクション時代劇。劇中、石原が演じる、主人公・無門(大野)の妻・お国が「欲」と「誇り」という、どんな人間の心の中にもあるであろう感情に正面から向き合うシーンがある。一つのクライマックスでもあり、物語が大きくうねりを見せる場面だ。真摯なまなざしで「誇り」という言葉を口にした石原は、自身にとってのプライドとは「変わる努力をすること」とつぶやく。
2002年にホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを受賞しデビューして以来、コンスタントにドラマ、映画に出演し、近年ではメッセージ性の強い作品で存在感を発揮する機会も多い。さらに外見的な部分でも、憧れの存在として同性の支持も高く、いま最も輝いている女性の一人と言っても過言ではない活躍だ。
そんな石原が「変わること」を大切にしているというのだ。「わたしはできれば常に前進していきたい。その意味で、自分の短所やコンプレックスを個性と言わないように、直そうと努力することは大事だと思うんです」と強いまなざしで語る。
さらに「誰でも自分の嫌いな部分ってありますよね。仕方ないと思ったり、流したりしてしまいがちなのですが、その場で直さないと成長につながらないんですよね」と目を背けず向き合うことの大切さを語る。そこには「嫌な部分に目を背けて、自分が変わろうとしないと、大切な人たちを傷つけてしまうかもしれない。それが嫌なんです。だから自分自身が変わる努力をしたいんです」という強い思いがある。
どう見られるかでなく、どうありたいか
こうした自身と向き合う姿勢は、外見的な部分にも変化を与えたという。「10代から20代中盤までは、どこかで『わたしなんて』と思っている部分がありました。夢はあるけれど、それに近づいていけない歯がゆさや情けなさがあって、外からの見え方ばかり気にしていたから、つらかったですね」と振り返る。
しかし、20代中盤から「自分がどうありたいか」を考えるようになったという。すると「メイクしていても楽しくなっていったんです。結果、褒めていただけるのはうれしいし、またメイクの勉強をしてみたいと思うようになり、ファッションも自分が好きなものを取り入れるようになっていったんです。自分が好きだったら、人から何と言われても納得できるようになりました」と気持ちの変化を語る。
「人からどう見られるか」を気にしなくなった結果「自分の好きなもの」を取り入れるようになった。「評価」は副次的なものというが「好きなものを褒められると自信になりますよね」と笑顔を見せる。
女優として「現実を伝えられる人間になりたい」と今後のビジョンを語った石原。本作でも、その言葉通りポップで軽やかな展開で進む物語の中、現代社会にも通ずる“欲の功罪”をしっかりとメッセージとして伝える一翼を担っている。(取材・文:磯部正和)
映画『忍びの国』は7月1日より全国公開