伊映画祭に続きニューヨークでも!香港の名脇役エリック・ツァンに生涯功労賞
第16回ニューヨーク・アジア映画祭で上映された映画『マッド・ワールド(英題) / Mad World』について、同映画祭で生涯功労賞を受賞した香港の名脇役エリック・ツァンが、7月12日(現地時間)ニューヨークの香港経済貿易代表部開催の記者会見で語った。
【写真】“香港の名バイプレイヤー”エリック・ツァン、伊映画祭から生涯功労賞!
本作は、寝たきりの母親を看病する中、浴室での事故で母親を亡くしてしまったことでうつ病になった阿東(ショーン・ユー)が、父親・大海(エリック)と二人暮らしを始め、香港社会のさまざまな偏見や誤解に悩まされていくという物語。新鋭ウォン・ジョン監督がメガホンを取り、エリックは香港電影金像獎で最優秀助演男優賞を受賞した。
一度は家族を捨て家出したが、阿東を支えることになる父・大海についてエリックは「完璧な脚本でキャラクターも自分に適した役に出会えることは、どんな俳優でも奇跡に近い。とても生々しい人間を描いていて、リアルで、それでいて感動的でもある。本当に素晴らしい脚本だったんだ。そんな良質な脚本だったから、題材的に難しい映画で難しい役でもあったけど、簡単に役柄に入り込むことができたよ」と話し、続けて「現在の香港社会の状況や人々を反映しているし、香港での上映後には今作がいかに香港の現況に迫ったものかに皆気づき、大きな反響を呼んだんだ」と香港での評判も明かした。
新鋭ウォン監督は本作が長編初監督作であり、28歳という若さだが、香港の若手監督についてエリックは「今作は若い世代の監督への支援のために設立された香港電影発展局のおかげで製作できたんだ。これは重要なことだし、感謝しているよ。僕が演技を始めた1980~90年代は、製作者が製作費以上の興行収入を得られることを理解していたから、若手も映画を製作できたが現在は違う。今作は製作費2億円で、撮影期間もわずか16日。監督にとってどれだけ難しかったかが理解できると思う。だから僕らベテラン俳優陣は事前に出演料をもらわずに参加したんだ」と明かし、また若手は共同制作会社のシステムや検閲を理解していないことも多いと話した。
生涯功労賞を受賞したことについては「ウディネ・ファーイースト映画祭で生涯功労賞を受賞したときもいったんだけど、ちょっと早いと思うんだ。僕はまだ若いほうだから! 香港映画の巨匠ロン・コン(龍剛)監督は、このニューヨーク・アジア映画祭で同賞受賞の3週間後に亡くなったし……もっと時間が経ってから欲しかったね」とジョークで答えた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)