自称不器用な東出昌大、役者としての今後の課題
天下分け目の決戦を真正面から描く、岡田准一主演のスペクタクル時代劇『関ヶ原』で、負のパブリックイメージを覆す若き武将・小早川秀秋に挑んだ東出昌大が、役者としての今後の課題を明かした。
天才棋士・羽生善治にふんした『聖の青春』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、日本批評家大賞助演男優賞などを獲得。連続ドラマ「あなたのことはそれほど」での怪演も話題を呼び、正統派の美形俳優として活躍する一方、脇でも光る役者として存在感を高めている東出。結婚し、父親になるなど私生活で豊かな経験を重ねていると同時に、石井隆や黒沢清らそうそうたる監督たちとの共同作業が、かけがえのない財産となっているのだろう。表現の引き出しから次々に新しい顔を覗かせ、観客を魅了する。
とはいえ東出本人は、「いつも、いっぱいいっぱいです。演技の上手下手で言ったら、下手な部類ですから」と自らにダメ出し。「あなそれ」の打ち上げの際にも、監督に“今後の東出の課題”について尋ねたという。ちなみに監督の答えは「もっとラクにやることも覚えなさい」。その言葉を東出は、「一生の仕事として自分が選んだのだから、精一杯やろうと頭でっかちになっていたんですけど、肩に力が入りすぎたらダメだよ、と言ってくださる方もいる。まだまだダメだなと思います」と噛みしめる。不器用を自認する彼ならではの真摯な、そして素直な姿勢もまた彼の大きな武器だろう。
人間として、役者として一回りも二回りも大きくなっている東出が、長年の構想の末に司馬遼太郎の国民的ベストセラーを映画化した原田眞人監督から課せられた使命、それは「全国の小早川さんが胸を張れる秀秋」になること。裏切り者や卑怯者という従来のイメージを覆すキーパーソン役を、繊細かつ堂々と演じ切っている。「正義を信じる」石田三成の戦いの命運を握った、秀秋の「義を貫きたい」と揺れる想いが、観る者の共感を誘ってやまない。(取材・文:柴田メグミ)
映画『関ヶ原』は全国公開中