まるで映画の中!ベネチア映画祭新設のVR部門とは?
第74回ベネチア国際映画祭
世界最古の映画祭である第74回ベネチア国際映画祭にて、VR部門(バーチャルリアリティー)が初めて新設されました。コンペティションも行われ、世界的知名度を誇る映画祭がここまでVR作品に力を入れるのは、初の試みであるとして注目を浴びました。果たしてその全貌とは?(編集部・石神恵美子)
VR部門の上映は、8月31日から9月5日にかけて、毎年映画祭が行われているリド島から船で2分ほどの小さな島、ラッヅァレット・ヴェッキオ島にて行われました。コンペティション部門には22作品がノミネートされ、座って観賞するタイプ、立って鑑賞するタイプ(鑑賞者のアクションが反映されるインタラクティブ型を含む)、インスタレーション併設型タイプの3つの種類があり、それぞれの作品の上映時間は5分から40分ほどとさまざまでした。
まるで映像世界の登場人物になったかのような体験をあたえてくれるVRの利点を生かしたストーリーテリングは興味深いものばかりでした。インスタレーション併設型『セパレート・サイレンス(英題) / Separate Silence』(デンマーク)では病室が実際に再現され、そのストーリーは主人公と妹が昏睡状態にあり、お互いに病院のベッドで向き合いながら、人生を回想し、死に直面するとは一体どういうことなのかを体験するというもの。VRドキュメンタリー『グリーンランド・メルティング(原題) / Greenland Melting』(アメリカ)では、グリーンランドの氷河のうえを歩きながら、2人の科学者が溶けていく氷冠について説明してくれます。台湾で活躍するツァイ・ミンリャン監督の『ザ・デザーテッド(原題) / The Deserted』(台湾)のように、映画監督としてすでに名を知られている監督の作品もノミネートされていました。
コンペティション部門に出品されている22作品の中から、『狼男アメリカン』『ブルース・ブラザース』などのジョン・ランディス監督を審査員長に、イタリア人俳優リッキー・トニャッツィ、『ぼくの名前はズッキーニ』のフランス人脚本家セリーヌ・シアマが、「VR最高賞」「VRエクスペリエンス最高賞(インタラクティブコンテント対象)」「VRストーリー最高賞(ノンインタラクティブコンテント対象)」の3つの賞の受賞者を決めることになっています。コンペティション出品作品以外にも、本映画祭の新人監督育成プロジェクト「ビエンナーレ・カレッジ・シネマ」やピッチマーケット「ベネチア・プロダクション・ブリッジ」の作品も上映されました。(編集部・石神恵美子)
第74回ベネチア国際映画祭は現地時間9月9日まで開催