モニカ・ベルッチ52歳、美の秘訣
映画『アンダーグラウンド』『黒猫・白猫』などのエミール・クストリッツァ監督による待望の9年ぶり新作映画『オン・ザ・ミルキー・ロード』でヒロインを務めた“イタリアの宝石”ことモニカ・ベルッチ(52)が美について語った。
戦場にミルクを届ける仕事をしている男コスタ(エミール)が村の英雄の花嫁になる予定のミステリアスな美女(モニカ)と恋に落ち、逃避行を繰り広げる姿を描いた本作。人気シリーズの最新作『007 スペクター』(2015)では最年長ボンドガールとして一躍注目を浴びたモニカだが、本作ではボンドガール以上のアクションを見せているとの称賛の声も多い。
しかし、本人いわく、苦労したのはアクションではなく、アドリブや言語だったそう。「脚本は必要最低限しか書かれていなくて、アドリブだらけだったの。エミールは5分ごとにいろんなアイデアが浮かぶものだから、大変だった。『よし、これをやろう』『もう2行セリフを言える?』とかって。とくに私の場合、母国語でないセルビア語で演じなくちゃいけなかったから複雑だった。コーチと一緒にセルビア語を習得したわ。絶望的なときもあったわね(笑)」。
それでもやり遂げられたのは、エミールが監督だったからとリスペクトをうかがわせる。「エミールが監督業に戻ってきてよかったわ。本の執筆やコンサート活動、それにドキュメンタリー映画などを経て、9年ぶりに長編映画づくりに戻ってきてくれて。監督、俳優、ミュージシャン、ビジネスマンの顔を持ち、私が出会った人の中でも多岐にわたるジャンルで活動しているアーティストだわ」。
さらには、本作の描くテーマにも惹かれるものがあったからだといい、「それも戦争中の街を舞台にしていても、喜びや希望、美を表す作品をつくってくれたのがうれしい。バルカンの戦争を描いてはいるけど、この作品は政治的なものではないと私は思ってる。人間について芸術的に描いた作品だと思う。エミール・クストリッツァによるリアリティーとファンタジーという二重性を目の当たりにするわけで、確かに暴力もあるけど、失うものは何もないという大人のラブストーリーでもある。主人公たちはもう若くはないけれど、出会った瞬間、魔法のようなことが起きる。愛と官能は行動力の問題であって、年齢は関係ないという、美しいメッセージを伝えていると思うわ」と熱弁する。
そんな中でモニカふんするヒロインこそが美を体現する存在として描かれているが、「美は贈り物だと思う。でも、さまざまな感情を引き起こす。美は好奇心を掻き立てたり、暴力的にもさせたり、だからこそ美とどう向き合うかを知る必要がある」と持論を展開。また、52歳にして、美について思うところもあるようだ。「年を重ねるごとに、心は趣を感じるようになる。年を取ることを受け入れられれば、また違う美しさを手に入れることができると思うの。受け入れることが大事よ。受け入れられなければもちろん、戦うことになるのだから」。
「例えばこの映画でも、(キャラクターに)シワがあるけど、だからといって美しくなくなるわけじゃない。シワもまた違う美しさだと思う。女性の美をそういうふうに捉えるのって興味深いことだと思うわ。女性は年を取るごとになぜか後ろめたい気持ちになったりするけど、その必要はないのよ。だって人生は続いていくんだから。美しさは年齢に関係ないと思う。美しさは心の内にあるものよ。それが本当の美だと思う」。そう語る彼女は、唯一無二の美しさを誇っている。(編集部・石神恵美子)
映画『オン・ザ・ミルキー・ロード』は全国公開中