ジェームズ・フランコ主演・監督作、実在モデルはジョニー・デップのキャスティングを希望していた?
主演・監督作『ザ・ディザスター・アーティスト(原題) / The Disaster Artist』で第65回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀作品賞にあたるゴールデン・シェル賞を受賞したジェームズ・フランコが、弟で共演者のデイヴ・フランコと共に記者会見を行った。栄誉を手にした兄に、デイヴは「彼は素晴らしい俳優であり、監督」と惜しみない賛辞を贈った。
同作は、謎多きアーティストのトミー・ウィソーが主演・監督・脚本を務めた映画『ザ・ルーム(原題) / The Room』(2003)の製作舞台裏を描いたコメディー。元ネタとなった映画は、“史上最低の映画”と称されるほどの珍品だが、逆にそれが伝説を呼び、公開から14年経った今も定期的に上映されるカルト映画となっている。
ジェームズが『ザ・ルーム(原題) / The Room』の存在を知ったのは、トミーの友人であり製作に携わったグレッグ・セストロが執筆したメイキング本「The Disaster Artist」が、2013年に出版された時。ニューヨーク・タイムズの書評を目にし「これは読まねば」と手にしたという。
ジェームズは「製作の舞台裏もクレージーだと思ったけど、一方でハリウッドドリームを夢見る者なら誰もが共感できる話だと思ったんだ。それに映画史において、最低な映画は何十本も生まれては消えていったけど、トミーの映画は未だに上映され続けているんだ。こんな特殊な例はないし、ある意味成功したと言ってもいいんじゃないかな」と題材の魅力を語った。
ただ、最初にトミーに映画化のオファーをした時には、「俺の役は誰が演じるの? ジョニー・デップはどう?」と言われたのだとか。ジェームズが「ジョニーは大スターだからどうかな?」と言葉を濁した後に、ようやくジェームズの名前が出たそうだが、「君の芝居を見たことはあるけど、良くも悪くもあるかな」と言われてしまったという。
劇中ではジェームズが、この独特な感性を持つトミーのルックスからまったりとした話し方、そしてオーバーアクトな芝居を完コピし、何度も観客の笑いを誘う。そのトミーと演技学校で出会い、わが道行くキャラクターに惹かれて共に映画製作をすることになる友人グレッグをデイヴが演じ、絶妙な凸凹コンビを披露している。
息のあったコンビネーションについて、ジェームズが「もうだいぶ前から2人で一緒に(映画製作を)やってるからね」といえば、デイヴも「お互いセンスも似ているし、ジェームズの才能を信用しているんだ。自分にとって家族や友人たちと映画を作ることは、もう当たり前のことのようになっていて、すごく居心地の良い時間を過ごせているよ。今後も一緒に映画作りをしていきたいね」と語り、兄弟の絆の深さを印象付けた。
本作は今年3月にアメリカで開催された第24回サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)でワールドプレミア上映され、その際、トミーも一緒に鑑賞したという。トミーの感想は「99.9パーセントは良かったと認める」。残りの0.1パーセントは何が問題だったのか問いただしたところ「冒頭の照明がちょっとね……」だったそうで、ジェームズたちは映画完成後もトミーの規格外のキャラクターに翻弄され続けているようだ。
ちなみに『ザ・ルーム(原題) / The Room』はトミーが600万ドル(約6億6,000万円。1ドル=110円換算)以上かけて製作し、アカデミー賞を目指して2週間の劇場興行も行なっている。その時はノミネートされなかったわけだが、『ザ・ディザスター・アーティスト(原題) / The Disaster Artist』はその可能性が期待できる。14年越しでトミーの夢が実現するか? 第90回アカデミー賞の発表に注目したい。(取材・文:中山治美)
『ザ・ディザスター・アーティスト(原題) / The Disaster Artist』は12月1日アメリカ公開、日本公開は未定