ルイス・ブニュエル傑作『皆殺しの天使』12月リバイバル公開決定!
ルイス・ブニュエルの幻の傑作と言われている映画『皆殺しの天使』(1962)が12月に渋谷シアター・イメージフォーラムでリバイバル公開されることが明らかになった。スペイン出身のブニュエルがメキシコに渡ってから製作した“メキシコ時代”の2作品『ビリディアナ』(1961)と『砂漠のシモン』(1964)も同時公開される。
1962年のカンヌ国際映画祭で上映された『皆殺しの天使』は、冷ややかな反応で迎えられ、審査員たちも困惑したとされるいわくつきの作品だ。最高賞のパルムドールは逃すものの、国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞を受賞し、ブルジョアに対する攻撃と人間の内に潜む無意識の暴露という、ブニュエル映画の二大特性を色濃く捉えており、批評家の間では『黄金時代』(1930)と並ぶブニュエルの最高傑作と位置づけられることも少なくない。
オペラ観劇後に晩餐会が催された邸宅で、宴を楽しむ20人のブルジョワたちだったが、夜が更け、明け方になっても、誰も帰ろうとしない。次の夜が来ても、誰もが帰らない。皆、帰る方法を忘れたか、その気力も失われたかのように客間を出ることができないのだ。召使も去り、食料も水も底をつく。何日間にもわたる幽閉状態が続き、人々の道徳や倫理が崩壊、事態は異常な展開を見せていく……。
併せて公開されるのはブニュエル「メキシコ時代」最末期の問題作『ビリディアナ』(1961)と『砂漠のシモン』(1964)。1940年代にメキシコに移ったブニュエルが、20数年ぶりに祖国スペインで撮った作品が『ビリディアナ』。修道女のビリディアナを通して、女性の性をテーマに描いた心理ドラマであり、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞するも、カトリック教会から大きな非難を浴び、祖国スペインやイタリアで上映禁止に至った問題作だ。一方の『砂漠のシモン』は、歴史上実在した柱頭修行者「聖人シメオン」の伝説を描いた中編映画で、ベネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞している。日本初公開から36年、鬼才ブニュエルの傑作再臨に胸が高鳴るばかり。(編集部・石神恵美子)