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ハリウッドVS米大統領!絶対的な権力に対抗する映画たち

コラム

強大な権力には映画で対抗!?
強大な権力には映画で対抗!? - Scott Olson / Getty Images

 ドナルド・トランプがアメリカ大統領選挙に勝利してから約1年が経過した。今年のアカデミー賞ではトランプに対する批判が集中し、いつになく政治色の濃い授賞式だったのも記憶に新しい。誰もが認知するアメリカ合衆国のリーダーであり、絶対的な権力を持つ大統領は、常に映画の格好の題材となり、特に大統領という存在を風刺する映画は過去に何本も作られてきた。(映画評論家:小林真里)

政治風刺満載!映画『チーム★アメリカ/ワールドポリス』場面写真

 そんな作品群の中で、昨年の大統領選挙中に話題になったマイク・ジャッジ監督のカルトコメディー『26世紀青年』(2006)はトランプ政権とその未来を予言しているとして世間を賑わした。500年後のアメリカでは人類の知能が著しく低下し、畑には水の代わりにスポーツドリンクがまかれ、元プロレスラーのマッチョな黒人が大統領(閣僚には弟や気に入ったスタイル抜群の女性を配置する始末!)を務めているが、「『26世紀青年』はフィクションではなくドキュメンタリー映画だった!」「この映画は未来を予測していた!」という記事やコメントが海外の多くの映画サイトやSNSで踊った。ブラックコメディーの名手であるジャッジ監督は「未来を予言していたのですか?」とTIME誌のインタビューで聞かれ「私は預言者なんかじゃない。490年もずれてたんだから」と鋭い切り返しを見せた。

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 時事的な社会問題をリアルタイムに、過激なパロディーとして痛烈に風刺することで有名なのが大人気長寿アニメ「サウス・パーク」。映画化もされた同シリーズだが、クリエーターのトレイ・パーカーマット・ストーンが製作した『チーム★アメリカ ワールドポリス』(2004)では、ジョージ・W・ブッシュ米大統領(当時)や選挙の対抗馬だったジョン・ケリー上院議員(当時)が攻撃の対象となった (ブッシュ元大統領のイラクへの米軍駐留やテロ対策を強烈に風刺!)。パーカーとストーンは「サウス・パーク」でも当然ドナルド・トランプをやり玉にあげたが、その後「トランプの存在自体がパロディーで、あれ以上面白く描くのは無理だから、もう番組では取り上げない」と決別宣言をした。ちなみにドナルド・トランプは、『ホームアローン2』やウディ・アレン監督『セレブリティ』『54 フィフティ・フォー』、そしてベン・スティラー監督・主演『ズーランダー』といった映画に本人役で出演しているのでファンの人は要チェックだ。

 これまで映画の中で大統領を演じる俳優も注目の的となってきたが、ティム・バートン監督のSFコメディー『マーズ・アタック!』(1996)では、名優ジャック・ニコルソンが大統領を演じ、地球に襲来した火星人たちに歓迎の姿勢を見せて、悲惨な最後を迎えた(当初この映画の監督を務める予定だったアレックス・コックスが1989年に執筆した脚本には、元アメリカ大統領としてドナルド・ドランプが登場していた!)。また、当時のアメリカのエンターテインメント業界と政治を風刺したブラックコメディー『アメリカン・ドリームズ』(2006)では、デニス・クエイドが新聞も読まない神経衰弱の大統領を演じている。ちなみにクエイドは、大統領暗殺を巡るシリアスなアクション・スリラー『バンテージ・ポイント』(2008)では大統領を護衛するシークレットサービスを演じており、オスカー俳優のウィリアム・ハートが大統領を演じた。

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 最後に、番外編的に「大統領選挙」を風刺した異色作として、ウォーレン・ベイティが監督・主演を務めた『ブルワース』(1998)を取り上げたい。時の大統領ビル・クリントンの対抗馬として立候補した、ベイティ扮(ふん)する上院議員が選挙キャンペーンでノイローゼに陥り、殺し屋に自分の暗殺を依頼、選挙演説ではラップで本音をぶちまけるが、その結果皮肉にも支持率が一気にアップする、という批評家から大絶賛され、アカデミー賞脚本賞にもノミネートされた政治コメディーだ。

 来年以降も、トランプ政権やアメリカ政府を風刺した映画が数多く作られるだろうが、監督たちがこの強大なトピック(対象)をどんな手法やアプローチで料理してくるのかも興味がつきない。また、トランプの動向いかんではトレイ・パーカーとマット・ストーンがスタンスを変えてくるはずなので、そこも注視していきたい。

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