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カルト作『サンタ・サングレ』仰天秘話も!ホドロフスキーの息子に父の思い出を聞く

主人公アレハンドロの青年期を演じたアダン・ホドロフスキー(左)
主人公アレハンドロの青年期を演じたアダン・ホドロフスキー(左) - (C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

 過去にジョン・レノンが『エル・トポ』(1970)と『ホーリー・マウンテン』(1973)の配給権を買い取ったという逸話を持つチリの巨匠アレハンドロ・ホドロフスキー。寡作ながらカルト的な人気を博す彼が23年ぶりに発表した新作『リアリティ・ダンス』(2013)の続編となる『エンドレス・ポエトリー』(11月18日公開)の主演を務めた息子のアダン・ホドロフスキーが来日。本作を通じて感じた父の偉大さ、少年時代に映画初出演した『サンタ・サングレ/聖なる血』(1989)のエピソードまでを明かした。

【動画】奇才ホドロフスキーが二人の息子たちと組んだ『エンドレス・ポエトリー』予告編

 新作『エンドレス・ポエトリー』は、アレハンドロ監督がチリで育った少年時代の記憶を題材にした自叙伝的な映画『リアリティのダンス』の続編。軍事政権下のチリ・トコピージャから、首都サンティアゴに舞台を移し、アレハンドロの青年期の物語が展開。前作に続き父ハイメを長男のブロンティス・ホドロフスキーが、息子アレハンドロの青年期を末の息子アダンが演じており、ファミリービジネスともいえる一作となっている。

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アダン・ホドロフスキー
来日したアダン・ホドロフスキー。イケメンでした!

 本作では、息子に医師になることを熱望する抑圧的な父との関係に苦悩しながら、アレハンドロが「詩」に生きがいを見いだし、詩人やアーティストらさまざまな人々との出会いを経て自立していくさまが描かれる。若かりし日々の父を演じるというのは特殊な経験に思われるが、その理由をアダンはこう語る。「昔の映画でも父が主演を兼任していることからもわかると思うけど、もともと監督(父)が一番好きな俳優が息子たちなんだ。なぜかというと父は映画業界自体が嫌いで、プロの俳優というのも嫌い。俳優のエゴが嫌いなんだそうだ」。

 「初めはどういうふうに父を演じるべきか、わからなくて戸惑った」というアダンだが、実際にアレハンドロ監督が生まれ育った地でロケを敢行したことが大きな助けになったと言い、父への理解を深めることにもなった。「そこは労働者階級の貧しい人々が暮らす場所で、父の出自を初めて知ったんだ。そういった貧困地域から芸術家、アーティストが生まれるのがいかに困難なことなのか。父がそこから抜け出したかったのもわかったし、一冊の詩の本との出会いから現在に至った経緯を通して、なぜいまだに父がエネルギッシュでいられるのかがわかった気がする。全く違う世界に飛び出すには、自分で何とかするしかないという覚悟が必要で、父にその勇気があったんだと思う」。

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アダン・ホドロフスキー
骸骨の黒い集団は、監督いわく「死の象徴」なのだそう(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

 そんな父との思い出について、アダンの映画初出演作である『サンタ・サングレ』について聞くと「すごくいろんなことを覚えているよ!」と鮮明に記憶をよみがえらせる。アダンはこの映画でサーカスの団長の息子として生まれ、壮絶なトラウマを追う主人公フェニックスの少年期を演じているが、撮影したのがメキシコで最も治安が悪い地域だったそう。「ファーストシーンは僕が象に乗って、周りに年老いたピエロたちがいるというようなシーンなんだけど、撮ったのが強盗団たちがたむろするような危険な場所だったから、父は彼らにお金を払って『何も盗まないように』と頼んでいたよ」。

アダン・ホドロフスキー
前作に続いて、もちとん監督も出演!(写真右)(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

 中でも、驚くべきは劇中、フェニックスの胸に父がタトゥーを入れるシーンの裏側。「フェニックスがタトゥーを入れる痛みのあまり泣くシーンなんだけど、父から『フェイクの涙をつけるか、本当に泣くか、どっちがいいか』と迫られたので、僕は本当に泣く選択をした。劇中の父は僕にタトゥーを彫っていて、本当の父は下で僕の足をつねっていたというわけ。だから、あのシーンの苦悶の表情は本物なんだよ。ホントに痛かったんだから!」と強烈な体験を振り返った。ちなみに、フェニックスの青年期を兄のアクセル・ホドロフスキーが演じており、「兄たちは慣れるために1か月間ホテルの部屋の中で、飛んでいる鷲と生活していたよ」とアレハンドロ作品らしいユニークなエピソードも飛び出した。

 現在、ミュージシャン、俳優と多岐にわたって活躍するアダンだが、幼少期からボードレールアルチュール・ランボーの詩を読みふけり、くしくも父と同じく詩から全てが始まったという。「『エンドレス・ポエトリー』を撮り終えて、父の名前から自由になれた。これまでは『ホドロフスキーの息子』だったけど、初めて自分自身になれた気がする」と晴れやかな表情を見せた。(取材・文:編集部 石井百合子)

アレハンドロ・ホドロフスキー監督作!映画『エンドレス・ポエトリー』予告編 » 動画の詳細
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