特殊メイクに4時間!土屋太鳳の闘病演技が泣ける『8年越しの花嫁』
岡山県在住の夫婦の実話に基づく感動作『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(12月16日公開)で300万人に一人の発症率とされる病に侵されたヒロインにふんし、体当たりの演技を見せた土屋太鳳に注目してみた。
本作は、YouTubeに投稿された動画をきっかけに話題となり、書籍化、テレビドキュメンタリーも製作された中原尚志さん、麻衣さん夫婦を襲った突然の悲劇の顛末を描くラブストーリー。土屋は、回復の見込みがたたない深刻な病・抗NMDA受容体脳炎に侵される麻衣さん役で、難度の高い演技に挑んだ。その難度の高い理由の一つに、演じる工程が(1)健康の状態、(2)病が発症する直前、(3)意識不明に陥り寝たきりの状態、(4)目を覚ました直後、(5)記憶の一部をなくした状態と多岐にわたる点が挙げられる。
尚志(佐藤健)との結婚を間近に控え幸福の絶頂だった麻衣だが、突然頭痛に襲われ「そんなところに行った覚えはない」と尚志との記憶もなくしていき、ついには幻覚を見るようになり半狂乱に。はつらつとしていた麻衣の「自分が自分でなくなってしまう」様子はあまりにショッキングだ。
とりわけ印象深いのが、ほぼ体を動かさない状態の(3)と(4)の過程。意識不明に陥った麻衣は、喉に人工呼吸器、鼻に管が通され、ひたすら眠り続ける。土屋は4時間もの時間を費やした特殊メイクを施して顔のむくみをリアルに表現し、けいれん発作や意識を関係なく体の一部が動く症状も体現。「ずっとこのままかもしれない」絶望を如実に伝えている。
さらに、目を覚ました直後は、医師いわく「脳の中がまだら」で幼児と同じ状態。そこから壮絶なリハビリを経て徐々に表情、言葉、手足の動きを取り戻していくさまを、大仰な動きを排した緻密な身体表現で演じてみせた。
たとえ麻衣がどんな状態であろうと、そばで見守り続ける太陽のような尚志を演じた佐藤のストイックな演技が、8年に及ぶ悲劇とその後に訪れる感動を一層際立たせている。(編集部・石井百合子)