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「韓流が寒流に」の流れは変わったのか?~韓流映画とドラマのいま~

コラム

新たな流れとして若い世代を引きつけたという『新感染 ファイナル・エクスプレス』
新たな流れとして若い世代を引きつけたという『新感染 ファイナル・エクスプレス』 - (C) 2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

 政治的に日韓関係は、春夏秋冬を問わず「厳寒状態」ともいわれた2017年。そんな中、K-POPでは兵役を終えた東方神起がドームツアーで約2年半ぶりに復活を遂げたほか、6月に日本デビューした女子中高生の間で絶大な人気を誇るガールズグループTWICEが、NHK紅白歌合戦にK-POPアーティストとして6年ぶりに出演するなど、明るいニュースも相次いだ。一方韓国ドラマは、2012年以降、フジテレビやTBSなどが地上波でのオンエアから次々と撤退。ヘイトスピーチや嫌韓ブームも重なり、「韓流ドラマは寒流に」と揶揄されたこともあった。だが、実は映画ドラマ共に、今も根強い人気を保ちつつ、新たなファン層を広げている。(文:桑畑優香)

 2017年の実績データを元とするTSUTAYA年間レンタルDVDランキングが先日発表された。アジアTVドラマ部門の結果を見ると、韓国放送時に最高視聴率41.6%を記録したソン・ジュンギ除隊後の復帰作「太陽の末裔 Love Under The Sun」を筆頭に、イ・ジュンギはじめ旬のイケメンスターたちが恋の駆け引きを演じる「麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち」、本作で大ブレイクを果たしたパク・ボゴム主演の「雲が描いた月明かり」など、韓国の胸キュン・ラブコメディーがずらりと上位にランクイン。「韓国ドラマの主な視聴者層は初期のブームを継承する50代以上の女性だが、『太陽の末裔』は40代が中心で、20代のファンも多い」と、TSUTAYAの担当者。韓国ドラマの売り上げは、約18%で、洋画、邦画、アニメとならぶ4強ジャンルだという。

 同様に、「わが社では、韓国コンテンツは映画や歌舞伎と並ぶ3大柱の一つ」と証言するのは、スカパー!やケーブルテレビで放送しているCS放送局、衛星劇場の担当者だ。CSやBSで韓国ドラマはキラーコンテンツとされ、2017年11月現在CSで185本、BSで59本がオンエアされている(韓国コンテンツ振興院調べ)。衛星劇場でも韓国ドラマの放送を昨年の26本から今年は34本に増強した。

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 中でも新しいトレンドはサスペンスドラマだ。ここ数年韓国ではケーブルテレビ局のドラマ制作が盛んになり、過激な暴力をタブーとしてきた地上波をしのぐ、自由な発想と表現の作品が続々と誕生。「シグナル」「ボイス ~112の奇跡~」などサスペンスの秀作が日本にも上陸している。さらに、今年の秋には、韓国でも大人気の作家、宮部みゆき原作の『ソロモンの偽証』(韓国版)がDVDとしてリリースされた。「良質のサスペンスによって、ラブコメファンのみならず、韓国ドラマを観る層の間口が広がった」 と、ドラマ配給会社エスピーオーの担当者は手ごたえを明かす。

 一方、韓国映画も好調だ。2015年に日本に輸入された韓国映画は43本、2016年は55本と上昇傾向にあり、いずれもアメリカおよびイギリス映画に次ぐ勢いだ(外国映画輸入配給協会調べ)。 特筆すべきは、9月に公開されたサバイバルアクション『新感染 ファイナル・エクスプレス』が、満席の劇場が続出するなど大きな反響を呼んだこと。ヒットの理由を映画配給会社ツインの担当者は、「ハリウッド的技術のゾンビ映画でありながら、イクメンになれない働きマンの父親と娘など韓国特有の人間ドラマがちゃんと描かれ、そこにほろっと感動したのでは」と分析。これまで韓国映画を観たことがなかった10代、20代が友達や恋人と映画館に足を運ぶ新しい流れを生んだ。

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 もともと、『親切なクムジャさん』のパク・チャヌク監督や『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督のような骨太の作品で40代以上の男性に人気の韓国映画だが、近年はイ・ビョンホンカン・ドンウォンチョン・ウソンといった「元韓流ドラマのアイドル」がトップスターとして君臨。イケメンで人気を博した(いまももちろんイケメン!)俳優たちが、年を重ねて演技派の役者へと成長。人気と実力を盾に、『MASTER マスター』や『アシュラ』などハードボイルドな作品に出演し、男女ともにファンの心を射止めている。

タクシー運転手 ~約束は海を越えて~
韓国の国民的俳優ソン・ガンホ主演『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』 - (C) 2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

 そんな中、「『勢いのある韓国映画にぜひ出演したい』という日本の俳優もたくさんいる」と韓国映画関係者は明かす。サスペンススリラー『哭声/コクソン』で「よそ者の男」を演じた國村隼が、昨年末韓国版アカデミー賞の青龍映画賞で日本人として初めて男優助演賞を受賞したのは、映画には国境を超える力があることを象徴する出来事だろう。

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 2018年も、光州事件を描くソン・ガンホ主演の『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』や、激動の韓国現代史を背景にしたクライムエンターテインメント『ザ・キング』など話題作が日本上陸。中でも、イ・ビョンホン主演の大型時代劇『南漢山城(原題)』は、坂本龍一が初めて韓国映画に音楽監督として参加している注目作だ。日韓の大物コラボも相次ぐ韓国エンタメ。新たな人々を魅了するその勢いは、もはや「韓国ドラマ=女性ファン、韓国映画=男性ファン」という従来の枠を打ち破り、次の段階に入りつつある。

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