オスカー初ノミネートに近いトランスジェンダー女優の名演!
2017年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀脚本賞)を受賞した映画『ナチュラルウーマン』から予告編が公開され、トランスジェンダー女優として初のオスカーノミネートもささやかれている、歌手ダニエラ・ヴェガの名演と美声が披露された。
チリ・サンティアゴで、ウェイトレスをしながらナイトクラブで歌っているトランスジェンダーのマリーナ(ダニエラ)が、歳の離れた恋人の突然の死によって思いもかけないトラブルに巻き込まれていくさまを描いた本作。ベルリン国際映画祭での銀熊賞受賞をはじめ、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞外国語作品トップ5、2018年のアカデミー賞外国語映画賞チリ代表にも選出されるなど、高い評価を受けている。
そんな本作で、逆境でもありのままに生きようとするヒロインを演じたのは、自身もトランスジェンダーであるダニエラで、The Hollywood Reporter による「今年のベスト演技5」に選ばれるなど、トランスジェンダー女優として初のオスカーノミネートもささやかれている。
今回公開された予告編は、恋人の急死により、絶望の淵に立たされるマリーナの悲痛な姿ではじまる。マリーナが美しく歌う、ヘンデルのアリア「オンブラ・マイ・フ(懐かしい木陰よ)」に乗せて、思い返される恋人との幸せだった日々。最愛のパートナーを失った悲しみの最中、警察からは身体検査を強要され、恋人の息子や血縁者たちには街から追い出されそうになる。元妻からも「お通夜にも葬儀にも来ないで」と拒否されるマリーナだったが、愛する人に最期の別れを告げたいという切なる想いが彼女を突き動かしていく。とりわけ、人生の“向かい風”を象徴する嵐の中を歩いていくシーンは印象的だ。自分を肯定しながら凛と生きるマリーナの姿に胸を打つ映像となっている。どれほど揺るぎない絆を結んでいても法で守られていないパートナーシップの社会的脆さや、ジェンダーアイデンティティを拒絶する人々の心理を描きあげたのは、チリ出身のセバスティアン・レリオ監督。(編集部・石神恵美子)
映画『ナチュラルウーマン』は2018年2月シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテほか全国公開