佐藤健&土屋太鳳『るろ剣』で育んだ確かな絆
『るろうに剣心』(2012)の緋村剣心役で次々と斬新なアクションを繰り出し、驚異的な身体能力を証明した佐藤健と、続編となる『るろうに剣心』京都大火編・伝説の最期編(2014)の巻町操役で、同じく目を見張るアクションを華麗にこなした土屋太鳳。当時新進気鋭の若手女優として注目を浴びていた土屋太鳳の身体能力の高さを絶賛していた佐藤だったが、この3年間で見事に人気女優へと上り詰めた土屋と、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(12月16日公開)で再び共演を果たす。そこには3年間、共に全力で走り続けた二人の、確かな知られざる絆があった。
佐藤と土屋が約3年ぶりに共演したのは、『るろうに剣心』とはガラリと変わって実話ゆえの説得力があふれる感動的なラブストーリー。結婚を目前に病で昏睡(こんすい)状態に陥り、回復するも相手の記憶を失った女性と、それでも彼女を愛し続けた男性の実話に基づくドラマだ。佐藤は、「いつか絶対また共演したいという気持ちは、ずっと持っていました。ただ次に土屋さんと臨む作品は、すごく大切にしたいなとも思っていて。言い方が難しいですが、やるにふさわしい題材に出会えたなというのが一番うれしかったです」、土屋は「わたしは健先輩の他の作品もたくさん観て、『るろ剣』以降、ずっと背中を追いかけていたんです。ものすごく影響を受けてきましたし、その思いを今回演じる麻衣につなげていこうと思いました」と念願かなっての再共演を喜ぶ。
佐藤と土屋が演じた尚志(ひさし)さんと麻衣さんは、今も元気に岡山で暮らしており、佐藤と土屋は実際に対面したうえで撮影に臨んでいる。「こんな人生があり得るんだってことに、驚きましたし感動しました。タイトルにもあるように、本当に奇跡だし、素敵な人生ですよね」(佐藤)。「麻衣さんはよく笑われる方で、時々豪快に突っ込んだりもする明るい方(笑)。尚志さんは穏やかで優しくて、やっぱり笑顔が印象的でした」(土屋)。
突然の難病が麻衣を襲い昏睡状態に陥る中、いつか目覚めることを信じ待ち続ける尚志。その思いが通じたのか奇跡的に麻衣は目覚めるが、そこから二人の長い試練は続く……。「健先輩は俳優としても、人としても本当に器の大きい方。大先輩でもちろん尊敬していますが、何かあるといつも一緒に考えて同じ目線で引き出してくれるんです」と時に言葉に詰まりながらも、懸命に自分の言葉で佐藤へのリスペクトを語る土屋を、終始穏やかな笑みを浮かべて見守る佐藤の姿が尚志に重なる。
「8年越し」と聞くと、大抵の人は「なぜ、そこまで待つことができたのだろう」と感心するだろう。だが、もしこれが家族だったら……? 「逆に家族なら待つのが当たり前だと思う」と佐藤。当時の尚志さんと麻衣さんはまだ籍を入れていなかったが、結婚を約束した女性=家族を愛し続けることを当たり前のこととする尚志の心情を、素直に受け入れている。
ともに普段から役に深く入り込むタイプの役者。佐藤と土屋自身は、それをやんわりと否定するが、「演じる」ということを心から楽しみ、時にはそれを超えた瞬間をも見せてくれる。名匠・瀬々敬久監督のもと、「芝居の形としては、ある種ドキュメンタリーのようなものを目指すという共通認識がありました」(佐藤)というのも納得。スクリーンには尚志さんと麻衣さん、そして佐藤と土屋の、確かな命の軌跡が刻まれている。(取材・文:遠藤薫)