衝撃的で美しい…想田和弘監督2年ぶりの新作、ベルリン映画祭に出品
第68回ベルリン国際映画祭
『選挙』(2007)、『精神』(2008)、『演劇』2部作(2012)などで知られるドキュメンタリー作家・想田和弘監督の約2年ぶりとなる新作『港町』が、2018年4月より公開。来年2月15日(現地時間)より開催される第68回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品されることが決定した。
事前のリサーチやテーマ設定、台本作りをせず、行き当たりばったりでカメラを回す。想田監督が「観察映画」と名付けた手法で撮影した7弾にあたる本作。特報は、「もう自殺しよう思って」とつぶやく老女の姿が収められた衝撃的な場面から幕を開ける。
本作は、前作『牡蠣工場』(2015)の撮影で岡山県・牛窓を訪れた際に着想を得た作品で、特報に登場したクミさんをはじめ小さな海辺の町に暮らす人々の営みが、全編モノクロで映し出される。
初めはカラーで制作したものの、本作の製作を手掛け想田監督の妻である柏木規与子の突然の思い付きによって急きょモノクロにすることになったと言い、想田監督はモノクロにした意図を次のように述べている。「モノクロームには、映像に虚構の被膜を一枚かぶせるような効果があり、この映画にとても合っていると思う。というより、今では本作を目に浮かべるとき、モノクローム以外には考えられない。仕上げまでずっとカラーで見ていたことが信じられない」。
「生きとってもダメじゃ」というクミさんの言葉の真意は……? 想田監督の新たな試みとは何なのか、想像もしない瞬間を予感させる一作となっている。ベルリン映画祭では、フィクション、ドキュメンタリー、実験映画などの意欲作を紹介する「フォーラム部門」に出品される。(編集部・石井百合子)
映画『港町』は、2018年4月よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開