仕事愛がすごい!チンパンジー研究の第一人者を追ったドキュメンタリー
チンパンジーの研究でその名をはせたイギリスの動物行動学者ジェーン・グドールさんが、彼女を題材にしたドキュメンタリー映画『ジェーン(原題) / Jane』について、ブレット・モーゲン監督と共に、ニューヨークのソーホーハウスで行われた特別試写上映後のQ&Aで語った。
【作品写真】モーゲン監督の代表作『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』
本作は、チンパンジーが草の茎でアリを捕る姿を報告し、人類固有とされてきた道具を使う能力がチンパンジーにも備わっていることを証明したことで有名なジェーンさんが、人類学の世界的権威であるルイス・リーキー博士の勧めで、タンザニアのゴンベでチンパンジーの研究をした若き日の姿を追ったもの。100時間以上の未公開映像を、映画『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』のモーゲン監督が1時間半のドキュメンタリーとしてまとめた。
ジェーンさんのことを知らなかったというモーゲン監督。本作を手掛けた経緯を「(プロデューサーが)彼女の未公開映像を送ってくれたんだ。動物の進化において言葉に言い表せないほどのドキュメントが残されていたことに驚かされたね。ジェーンが執筆した『森の隣人-チンパンジーと私』のように、叙情的な映像を通して映画という媒体で伝えたかったんだ」と説明する。対するジェーンさんは、「また、わたしのドキュメンタリーを描くの?(2010年に映画『ジェーンズ・ジャーニー(原題) / Jane’s Journey』が製作されている)と思ったわ」と振り返りつつも、「でも、アフリカの動物団体などへの寄付も考えて、今作に参加することに応じたの。今作の映像は、わたしがこれまで描かれてきたどのテレビ番組やドキュメンタリーよりも、鮮明に当時のことを思い起こさせてくれたわ」と感謝した。
モーゲン監督いわく、“仕事愛を描いたラブストーリー”だという今作。「ジェーンが息子ヒューゴをタンザニアのゴンベで産み、(仕事を抱えながら)母親として挑戦しなければいけなかった時に、一人で大自然の前に立っているシーンがあるのだけど、そこには男性が必要ないパワフルな女性がいたんだ。彼女は子供へと同様に情熱を持った仕事にも、愛情を注ぐことができていたからね」と彼女に強い女性像を見いだしたことを明かした。
チンパンジーの研究についてジェーンさんは、「世界の国々でさまざまな野生動物の研究がなされ、いろいろな能力が発見されたことで、現在、人間の動物との接し方自体が完全に変わったわ。その中でも霊長類の研究は、第1次世界大戦以前から本格的に始められ、目覚ましい進化を遂げてきたの。そんな変化の中で、第1波として関われたことを誇りに思っているわ」と満足そうな笑顔で語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)