ギレルモ・デル・トロ監督、日本で食べすぎボタン閉まらず!
本年度アカデミー賞13部門ノミネートされている映画『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロ監督が30日、赤坂プリンスクラシックハウスで行われた来日記者会見に来場、日本食のおいしさにハマってしまったことなどをチャーミングに語った。
米ソ冷戦下のアメリカを舞台に、声を出せない女性が不思議な生き物と心を通わせるさまを描き出した本作。第74回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得したのをはじめ、世界各国の映画賞を総なめ。さらに3月4日 (現地時間) 発表予定の第90回アカデミー賞では最多13部門にノミネートされたことが発表されたばかりであり、世界が注目している絶好のタイミングで来日を果たすこととなった。
「このタイミングで僕の大好きな作品を日本に持ってくることができてうれしいよ。日本は(デル・トロ監督のような)“太った”ハートには近しい場所なんだ」と人懐っこい笑顔を見せたデル・トロ監督は「この作品は美しいおとぎ話で、こんな時代にふさわしい作品となっているんだ」と語る。今回のアカデミー賞ノミネートについて「僕にとっては2度目のオスカーノミネーションなので本当にうれしいよ」と切り出すと、「前回ノミネートされたのは『パンズ・ラビリンス』だったんだけど、両方とも自分らしさを表現した作品なんで、そういう作品が認められてノミネートされるというのは本当にうれしいことだね」と晴れやかな顔を見せた。
本作の時代背景は1962年のアメリカであるが、デル・トロ監督は不寛容な空気がまん延する現代だからこそこの物語が必要だと語る。「よその者、異種を恐れるという物語は、携帯電話が登場するような現代の設定にするとなかなか人は話を聞いてくれないし、なかなか語りづらい。でも1962年に声が発せない女性と獣がいた。そういう寓話(ぐうわ)的なおとぎ話としてならみんなが聞いてくれると思ったんだ。1962年は人々が裕福となって家を買い、車を買い、将来の希望を持っていた偉大な時代だった。宇宙レースがあって、ケネディもホワイトハウスにいたしね」と語るデル・トロ監督。
「しかし現実的には冷戦もあったし、差別もあった。まさに現代と同じだ。1960年代にテレビが登場し、映画が衰退した。だからこそ、そういう時代に愛をこめて、映画に対する愛の気持ちで描いているんだ」と続けると、「この映画はラブソングのようなイメージと音でシンフォニーを奏でているんだ。よく車を運転している時に、いいラブソングがかかると、ボリュームをあげて歌うような気分になるよね。それを感じてほしかった。ハリウッドの黄金時代のような、クラシカルな映画として感じてほしい。でも映画自体はクレイジーな映画だけどね」とちゃめっ気たっぷりに付け加えた。
そしてこの日はデル・トロ監督の『パシフィック・リム』に出演した女優の菊地凛子がゲストに来場。「こんなにおめでたい席に呼んでくださって。3~4年くらいずっと監督にお会いしたかったんで、こうやってお会いできて大変光栄です」と笑顔を見せた菊地は「本当に美しい映画でした。ちょうど昨日観たばかりなんですが、感動覚めやらない、究極のラブストーリー。真実の愛、深い愛とは何か、それを見せてもらった」と映画を称賛した。
さらに「(アメリカに)帰ったらアカデミー賞が待っていますよね。忙しい監督なので、来日してくれてうれしかった」と語った菊地に、デル・トロ監督は「彼女がいたから『パシフィック・リム』を作ろうと思ったんだ。僕にとっては彼女が主人公だよ」と返答。そして続けて「実はジャケットの前ボタンが閉まらなくなってしまってね。日本ではせんべいやお餅にハマッてしまって。しゃぶしゃぶとかいろいろ食べてしまってね」とちゃめっ気たっぷりなコメント。そして最後に日本のファンに向けて「メキシコの兄弟を助けると思ってぜひ劇場に来てください」とメッセージを送った。(取材・文:壬生智裕)
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は3月1日より全国公開