歌って踊れる俳優ヒュー・ジャックマンのすごいぞ&いい人伝説
コラム
多くのハリウッドスターを「誰からも愛される」条件でランクづけしたとき、トップの有力候補にとなるのは誰か? それはヒュー・ジャックマンだろう。ウルヴァリン役として『X-MEN』シリーズを牽引してきたアクションスターのヒューだが、やはり彼を語るときに欠かせない要素がある。それは「歌って踊れるミュージカル俳優」と「スターなのに、いい人」という2点だ。(文・斉藤博昭)
圧巻ライブパフォーマンス!『グレイテスト・ショーマン』特別映像
イングランド出身の両親の下、オーストラリアのシドニーで生まれた彼だが、母親は早くに英国に戻ってしまい、父親がヒューら5人の子供たちを育てた。末っ子だったヒューは、早くから自立心に目覚め、まわりを喜ばせることへの意欲を高めていったようだ。
2009年、ヒューがアカデミー賞授賞式のホストを務めたとき、ステージ上での華麗なダンスに目がクギづけになった人も多いはず。特に客席のアン・ハサウェイを呼んでデュエットを見せたシーンは、ここ何年かのアカデミー賞でも最も印象に残る瞬間だった。この3年後に『レ・ミゼラブル』に主演し、彼はミュージカルスターとしての実力をスクリーンで発揮したわけだが、スターの地位を築いた2000年の『X-MEN』より前の1998年、彼はすでにイギリス王立劇場の「オクラホマ!」の主演で、ローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされるなど、ミュージカル俳優の才能を開花していた。映画界で大スターになった後も、ブロードウェイでの「ザ・ボーイ・フロム・オズ」でトニー賞ミュージカル主演男優賞を受賞。アクション俳優としてストイックに鍛え上げた肉体が、ダンスのテクニックも向上させ、パワフルかつ繊細な歌唱力にも年々、磨きがかかってきた。
俳優というより、エンターテイナーとしての自覚があるのだろう。マスコミとのインタビューでも突然、生歌を披露したりと、ヒューはとにかくサービス精神旺盛である。他のビッグスターたちは、ときにエキセントリックな一面をのぞかせたりもするのだが、彼の場合は、常に誠実で前向きな印象。かと言って、作った「わざとらしさ」を感じさせない。真性の「いい人オーラ」を放っているのだ。
ヒューの「いい人伝説」は数多く存在するが、中でも忘れられないのは、2013年のアカデミー賞授賞式だ。主演女優賞に輝いたジェニファー・ローレンスが、ステージへの階段の途中でつまずいて転んだとき、いち早く駆け寄ったのがヒューだった。そのジェントルマンな対応に、全世界の視聴者が感心&感激!
映画の撮影中も、トップスターにしては珍しいほど、ヒューはまわりを気づかうことで有名。真夏の東京で『ウルヴァリン:SAMURAI』のロケが行われたとき、黒ずくめの衣装を着たヒューが最も暑さに苦しんでいたはずなのだが、カットの声がかかったとたん、自分の疲れはどこへやら、見学していた取材陣に駆け寄り「暑くない? だいじょうぶ? 水を飲んでね」などと心遣いを忘れない姿も。
ヒューといえば、「すきやばし次郎」の常連。寿司好きのハリウッドスターの代表格だが、実際の彼はマグロの赤身など限られたネタが好物らしく、寿司全般を何でも好んで食べるわけではないという。それでも「寿司大好き」というイメージを崩さないのは、彼の人の良さの表れかも!? 一方で、息子と富士山に登頂した際は、一般の登山者とともに山小屋でカレーライスを食べるなど、セレブらしからぬ行動が共感を集める。ことあるごとにツイートする妻への変わらない愛も、ヒューのまっすぐな気持ちだと好印象で受け止められている。
そんなヒューの「いい人」と「エンターテイナー」の個性が、究極で結びついたのが、最新作の『グレイテスト・ショーマン』(2月16日公開)だ。芸達者を集めてショービジネスに革命を起こした、伝説の興行主、P.T.バーナムの半生が、ミュージカルで展開。歌と演技が中心だった『レ・ミゼラブル』とは違い、今回はキレ味たっぷりのダンスもプラス。ミュージカルスターとしての本領を発揮している。衣装やセットなどゴージャスな映像に、ヒューの魅力が最高レベルでハマっているのだ。
演じるバーナムが、ヒューの素顔にシンクロするのも見どころで、世間から白い目で見られる仲間への励まし、家族にそそぐ愛、そして「いい人」ゆえの苦悩……と、まさにヒューそのものの人間ドラマが描かれる。共演者もヒューに大きな影響を受けたようで、共演のゼンデイヤは「キャストだけでなく、誰にもやさしく敬意をもって接していた」と、ヒューの現場での態度を絶賛。ザック・エフロンも「ヒューは誰よりも早くセットに入り、いちばん最後まで残っていた。僕が出すアイデアもどんどん取り入れてくれたよ」と、感激を隠さない。
これまでの芸歴と、誰にも愛される素顔。ヒュー・ジャックマンの「2大魅力」を重ねながら観ることで、『グレイテスト・ショーマン』は、その輝きをさらに増すことだろう。