周防監督デビュー作『変態家族 兄貴の嫁さん』も4Kで上映!ベルリン映画祭でピンク映画特集
第68回ベルリン国際映画祭
2月15日にドイツで開催される第68回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で、数多くのピンク映画を企画・製作してきた朝倉大介こと、国映株式会社代表の佐藤プロデューサーをフィーチャーした特集「ア・ピンク・トリビュート・トゥ・ケイコ・サトウ」が行われることが発表された。特集では周防正行監督のデビュー映画『変態家族 兄貴の嫁さん』(1984)など3作が4K化されて世界初披露される。
ピンク映画は日本映画界斜陽の1960年代、救世主のように生まれたジャンルだ。低予算ながら、性愛描写を入れるなどの条件を満たしていれば自由に制作できるとあって、若松孝二監督を筆頭に、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の瀬々敬久監督や、『おくりびと』(2008)の滝田洋二郎監督らが若かりし時代に前衛的かつ実験的な作品作りに挑んだことで知られる。海外ではこれまでもロッテルダム国際映画祭(オランダ)などで紹介されてきた。
そこで新たに、同部門のプログラマーであるクリストフ・テルヘヒトは「ピンク映画が生み出される原動力の一つとなっていた女性の存在はあまり知られていない」と佐藤さんに着目した。佐藤さんは業界内では“おねえさん”の愛称で親しまれているが、表舞台では朝倉大介名義で通し、50年以上にわたって1,000本以上の映像作品をプロデュースし、まさに“生きるピンク映画史”と言えるだろう。
今回上映されるのは、海外で人気の高い鈴木清順監督作の脚本家としても知られる大和屋竺監督『荒野のダッチワイフ』(1967)。足立正生監督がパレスチナ革命に身を捧げる直前に撮影した『噴出祈願/十五才の売春婦』(1970)。そして周防監督が小津安二郎監督のカメラワークを参考にしつつオマージュを捧げた『変態家族 兄貴の嫁さん』(1984)の3作だ。
これは単にピンク映画を日本映画史の1ページとして再考察することだけが目的ではない。ピンク映画はフィルム撮影が基本となっているため劇場のデジタル化に対応できなくなっているだけでなく、現存するフィルムの劣化も著しい。そこで国映とインターフィルム(本社・東京)、ドイツの映画会社ラピッド・アイ・ムービーズが共同で新たなプリントの製作と4Kデジタル化という修復・保存プロジェクトを実行しており、その成果発表の場でもあるのだ。
すでに向井寛監督『ブルーフィルムの女』(1969)、渡辺護監督『おんな地獄唄 尺八弁天』(1970)が4K化の作業を終えている。今後も順次作業を進めて国内外で配給していく予定だという。
朝倉プロデューサーは高齢ということもあり今回は現地入りしないが、「何十年前は、認知される存在ではなかったピンク映画が、歴史を重ねた結果、ベルリンの舞台で上映されるのは光栄です」と喜びのコメントを寄せている。(取材・文:中山治美)
第68回ベルリン国際映画祭は現地時間2月15日から25日まで開催。