日劇最後の『ゴジラ』上映!“レジェンド”宝田明が涙
前身となる”日本劇場”時代も含めると、およそ85年もの歴史を誇る映画館「TOHOシネマズ日劇」の最終上映作品のひとつとなった『ゴジラ』(1954)が4日に上映され、同作に出演した宝田明が来場。観客からの熱い拍手を一身に浴びると、その力強さに「今年で84歳になる宝田明を泣かせないでください」と涙を見せた。
多くの歴代ゴジラ作品を上映した“ゴジラの聖地”「TOHOシネマズ日劇」(日劇1、日劇2、日劇3の計3スクリーン)もいよいよこの日で閉館。同館のフィナーレとなる特別上映イベント「さよなら日劇ラストショウ」では、同館の歴史を振り返り、さまざまな映画を上映してきたが、世界を魅了した特撮映画の金字塔『ゴジラ』が、3スクリーンのうちのひとつとなる「日劇2」でのクロージング作品として上映された。
この日のチケットは即日完売。超満員となった会場に宝田が登場すると、会場は万雷の拍手。“レジェンド”の登場に、中には思わず立ち上がって拍手を送る観客の姿も。力強い拍手の音が会場を包み込む様子を見た宝田の瞳からは見る見るうちに涙が。そしてハンカチを取り出すと、客に背を向け、そっと涙をぬぐった。
再び客の方を向いた宝田は「今年で84歳になる宝田明を泣かせないでください」と感無量の表情。「いま、日本中にある劇場で舞台あいさつがあり、終焉(しゅうえん)を迎えている劇場もありますが、こんなにもあたたかい、本当にあたたかい拍手は終生、忘れることはありません。ありがとうございます」と謝辞を述べる宝田に、会場からはさらなる拍手がわき起こった。
さらに「同僚の河内桃子、一期上の平田昭彦、名優・志村喬、そしてもちろん田中友幸プロデューサー、世界的な匠(たくみ)であった円谷英二……」と続けた宝田は、「皆さん遠いところに行ってしまいまして。生き残ったのはわたしだけだと言っても過言ではないくらいですが。しかし、こんなにあたたかい観客の前でオリジナルの『ゴジラ』が上映されたことを、天におります彼らも喜んでいると思います」とかみしめるように付け加えた。
そしてこの日、観客と一緒に映画を鑑賞していたという宝田。「今日も映画を拝見していて、モノクロはやはり訴える力があるなと思いました」と切り出すと、「わたしはかつて、かび臭い試写室ではじめてこの映画を観た時に、ひとりおいおいと子どものように泣きました。彼は人間が起こした水爆実験の被害者なのに本当にかわいそうだと思ったのです。本多(猪四郎)監督からは『宝田君、なぜそんなに悲しいんだ』と尋ねられましたが、ただただ泣くだけでありました。そして今日、エンドマークで終わる時、やはり涙が止まりませんでした」と振り返った。その後も数々の貴重なエピソードを披露した宝田。最後に「日本の議員さんにもオリジナルの『ゴジラ』を観てもらって、平和の誓いを立ててもらいたいと思います」とメッセージを送った。(取材・文:壬生智裕)