TOHOシネマズ日劇、85年の歴史に幕…大勢のファンが最後を見送る
2月4日、現存する劇場の中では日本最多の座席数を誇るスクリーンを有する映画館「TOHOシネマズ日劇」がラスト上映作品となる宮崎駿監督の『もののけ姫』をもって、85年の歴史にフィナーレを飾った。
前身となる「日本劇場」時代から数えると、およそ85年もの歴史を誇る日劇。定員2,920人の大劇場「日本劇場」として1933年12月24日にオープン。映画上映に、音楽やダンスといった実演を付けるという日劇の興行スタイルが人気を集めた。その後、『スター・ウォーズ』『七人の侍』など数多くの映画を上映してきたが、建物の老朽化により「日本劇場」は1981年に閉館。跡地に建設された「有楽町マリオン」内に、“新しい日劇”として「日本劇場」「日劇東宝」「日劇プラザ」の3劇場がオープンすることとなった。そして2002年には日劇PLEX(日劇1、日劇2、日劇3)としてリニューアルオープン。その後、2009年からは現在のTOHOシネマズ日劇として営業を継続。名実ともに日本を代表する劇場として、1億人以上の観客を集めた。
今回の閉館を迎えるにあたり、同劇場では特別上映イベント「さよなら日劇ラストショウ」を開催。長きにわたり日本の映画館をけん引してきた同劇場の、85年間の感謝の気持ちを込めて、えりすぐりの作品を上映する機会となった。そしていよいよ最終日となったこの日、まずは3劇場のうちのひとつ、日劇2で『ゴジラ』が終映、続いて日劇3で『トップガン』が終映となった。
そして午後7時頃、946席という、現存する劇場の中では日本最大数の座席を備える日劇1で、宮崎監督の『もののけ姫』の上映が終了し、3劇場での営業はすべて終了。程なくして、劇場からはひとり、またひとりと観客が退出。スタッフに向けて拍手でねぎらう人、「ありがとう」と呼びかける人、劇場の前で記念撮影を撮る人など、皆が皆、名残惜しそうな様子であった。
そしてスタッフも総出で観客を見送り。彼らは、900人をこえる観客ひとりひとりに「ありがとうございました!」「エレベーターは右でございます」「正面のエスカレーターもご利用くださいませ」と呼びかけ続けた。そしておよそ25分後、観客全員を見送った劇場スタッフが劇場前に集合。大勢のファンが見守る中、スタッフを代表して支配人の佐藤希氏が最後のあいさつに立った。「本日、日劇は最後の日を迎えることになりました。せんえつながら一言、皆さまにお礼のごあいさつをさせていただきます。わたしは日劇支配人の佐藤と申します」と切り出した佐藤支配人に向けて、会場からは大きな拍手が。
さらに「日劇は、85年間で、実に1億人以上のお客さまに足を運んでいただきました、皆さまに愛され、今日まで上映を続けることができたこと、心より感謝申し上げます。本日で、日劇は閉館いたしますが、日劇の魂は、3月29日にオープンするTOHOシネマズ日比谷へと引き継ぎますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います」と続けた佐藤支配人だったが、口をへの字に閉じて感極まった様子。それでも最後に力一杯の声で「最後になりますが、85年間、日劇を愛していただき、誠にありがとうございました!」と観客に呼びかけた。そしてそんなスタッフに向かって、ロビーに集まったファンの中からも「ありがとうございます!」という感謝の言葉が飛び交った。この日、日劇85年の歴史が華やかに幕を下ろした。(取材・文:壬生智裕)