冬季オリンピック競技を映画で体感!ナンシー・ケリガン襲撃事件描く衝撃作から加藤ローサ主演作まで
スピードスケートの小平奈緒が女子500mで、フィギュアスケートの羽生結弦が男子シングルで金メダルを獲得するなど、日本人選手の快進撃が続く平昌オリンピック。熱い戦いが繰り広げられるオリンピック冬季競技大会の競技の魅力を体感すべく、ウィンタースポーツをテーマにした映画を振り返ってみた。(編集部・石井百合子)
フィギュアスケート『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』『俺たちフィギュアスケーター』
まずは、今年のアカデミー賞で3部門にノミネートされた衝撃作『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(5月4日公開)から。アメリカ人女性で初のトリプルアクセルを成功させ、1992年アルベールビル、1994年リレハンメルと二度のオリンピック代表選手になるも、1994年に夫の友人がライバルであるナンシー・ケリガンを襲撃。のちにフィギュアスケート界を追われた問題児トーニャ・ハーディング。世界を震撼させた事件の内幕とともに、トーニャの波乱に満ちた半生を追った伝記ドラマだ。物語は、トーニャ、その母親、その夫、夫の友人など事件を知る人物たちがトーニャの半生を回想する形式で進行する。天賦の才能に恵まれ1日8時間以上練習、全てをフィギュアに捧げていた彼女だが、なぜか審査員たちのウケが悪い。「スケートは技術だけではない」というが、では彼女は何を頑張ればよかったのか? 幼少期から厳しかった母との確執、暴力を受けながらも別れと復縁を繰り返す夫との腐れ縁……トーニャの複雑な内面とともに、フィギュアスケート界の不可解な“体質”が浮き彫りになるところも興味深い。『スーサイド・スクワッド』などのマーゴット・ロビーの、猛特訓を積んだスケーティンクはもちろん話し方や仕草まで完コピした熱演に圧倒されること必至。
一方、男性のフィギュア・ペアを描いた異色のスポ根コメディーが『俺たちフィギュアスケーター』(2007)。『エルフ ~サンタの国からやってきた~』(2003・日本劇場未公開)などの名コメディアン、ウィル・フェレルと、『バス男』(2005・日本劇場未公開)のジョン・ヘダーが犬猿の仲の元スター選手に。自分が大好き、目立ちたがり屋が災いしてフィギュアスケート界を追われた2人が返り咲くために、前代未聞の男子ペアとしてペア競技への出場を目指す。珍妙なトレーニング風景に加え、ピッチピチ&ギラギラの衣装に身を包んだ2人の雄姿(?)が刺激的な快作だ。
スキー&スノーボード『銀色のシーズン』
『海猿 ウミザル』(2004)、『LIMIT OF LOVE 海猿』(2005)を大ヒットさせた羽住英一郎監督が、雪山を舞台にしたドラマ『銀色のシーズン』(2007)。寂れた町営スキー場で祐治(玉山鉄二)、次郎(青木崇高)とともに何でも屋として働く銀(瑛太)が、スキー場で3日後に執り行われる結婚式を控えた花嫁・七海(田中麗奈)にスキーの個人レッスンをすることに。若くして引退した元プロスキーヤー・銀の過去への決着、3日限りの関係だったはずの七海との意外な顛末が描かれる。スキーヤー&スノーボーダーに向けてこだわったという滑降シーン、競技シーンなど臨場感あふれるアクションシーンが見もの。ハリウッドからスピーディーな空中移動撮影を可能にするスパイダーカムが導入されている。
カーリング『シムソンズ』
カーリングを題材にした希少な邦画が、2006年公開時人気絶頂だった加藤ローサ主演の青春劇『シムソンズ』。2002年のソルトレークオリンピックに女子日本代表として挑んだチーム「シムソンズ」の4人の少女たちの実話に基づく物語で、一人を除いて全員ド素人でやる気ゼロだったチームが数年後、日本代表チームへと上り詰めていく。シムソンズにふんした加藤、藤井春菜、高橋真唯、星井七瀬がとにかくキュートで、JUDY AND MARY の主題歌「BLUE TEARS」が絶妙にマッチ。北海道が舞台だけに、大泉洋が風変わりなコーチ役で出演。
アイスホッケー『スマイル 聖夜の奇跡』
俳優の陣内孝則が自らの原作を、森山未來主演、加藤ローサ共演により映画化した監督第2作『スマイル 聖夜の奇跡』(2007)。フィギュアスケートコーチの恋人(加藤)を追いかけて北海道へやってきた元タップダンサー・修平(森山)が、ひょんなことから弱小少年アイスホッケーチーム、スマイラーズの監督に就任し、勝利に導いていく。弱小チーム・スマイラーズのメンバーを演じるのは、約300人の中から選ばれた演技初挑戦のアイスホッケー少年たち。決勝戦は1万人近いエキストラの協力で実現したという大掛かりな撮影が敢行された。クリスマスソングの「THE LITTLE DRUMMER BOY」が効果的に使われ、終盤、森山がアイスホッケー会場のロッカールームの卓上で披露するタップダンスも印象的。
ボブスレー『クール・ランニング』
『ナショナル・トレジャー』(2004)などで知られるジョン・タートルトーブ監督の1993年の映画『クール・ランニング』は、1988年のカルガリーオリンピックのボブスレーに挑んだ冬季五輪史上初のジャマイカ・チームの実話を映画化したコメディー。予選で敗退した陸上選手デニス(レオン)を筆頭にボブスレーに関してはド素人、協調性ゼロの面々が、涙ぐましい奮闘で夢に向かって一つになっていくさまが痛快。バスタブで練習する風景はあまりにも有名。